第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本地域理学療法学会 一般演題ポスター
地域P13

2016年5月29日(日) 11:10 〜 12:10 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-TK-13-5] 短時間型デイサービスにおける要支援者の運動器機能向上に対する効果の検証

大井裕幸1, 西川明子1, 真田将幸1, 中川法一2 (1.株式会社フルーション, 2.医療法人増原クリニック)

キーワード:要支援, 短時間型デイサービス, 介護予防

【はじめに】

急速な高齢化がすすむ我が国において,介護予防の観点から運動機能向上に特化した短時間型のデイサービスは年々増加している。しかし,介護保険要支援認定者(以下,要支援者)を対象とする介護予防通所介護サービスは,平成29年4月までに各市町村が実施する介護予防・日常生活支援総合事業(以下,総合事業)のサービスに移行されることになった。この総合事業では,効率的かつ効果的な介護予防を推進するために,地域における多様なサービスの充実が急務となっている。当社では,総合事業への移行を見越し,平成26年10月より,要支援者の運動器機能向上に特化した短時間型のデイサービスを展開している。そこで,今回,デイサービス利用者の6ヶ月間の運動機能の変化を調査し,要支援者に対する介護予防の効果について検証したので報告する。


【方法】

対象は当社デイサービスを利用する要支援者31名(76.6±7.4歳,男性7名,女性24名)とした。サービス内容として,TRXを用いた集団でのサスペンショントレーニングを取り入れ,約60分の運動プログラムを実施している。調査項目は,Timed Up & Go Test(TUG),Functional reach test(FRT),2ステップ値,立ち上がりテストとした。2ステップ値と立ち上がりテストは,「ロコモ度テスト」に準じて実施した。各項目における初回利用時と6か月後の変化について,TUGと立ち上がりテストはWilcoxonの符号順位検定,FRTと2ステップ値は対応のあるt検定を用いて比較した。統計解析にはJMP8.0.2(SAS.Institate Japan)を用いた。


【結果】

初回利用時と6か月後の変化について,TUGは初回12.2±4.2秒から6か月後11.5±4.9秒(p<0.05),FRTは初回27.3±8.2cmから6か月後29.7±7.8cm(p<0.05),2ステップ値は初回0.85±0.19mから6か月後0.92±0.22m(p<0.05),立ち上がりテストは初回3±2~5回から6か月後4±3~4回(p<0.05),といずれも有意な改善がみられた。


【結論】

今回,対象者の筋力やバランス能力などの運動機能が有意に向上した。この結果から,短時間型デイサービスでの要支援者に対する取り組みが効率的な介護予防の推進に資するものであることが示唆された。総合事業の構築に向けて,多様なサービスが必要とされる中,効率的な運動器機能向上サービスを展開することで,その他趣味活動や地域活動などへの参加に充てる時間が生じ,利用者のQOL向上に繋がる可能性があると考える。また,これからの介護予防は,活動的な状態をバランス良く維持するための活動や社会参加を促すことが必要と考えられている。その為,今後は長期的な効果の検討に加えて,社会参加や環境へのアプローチに繋がる取り組みが必要であると考える。