第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本地域理学療法学会 一般演題ポスター
地域P14

2016年5月29日(日) 11:10 〜 12:10 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-TK-14-2] 通所リハビリテーション利用者の身体活動量に対する諸要因の分析

杉本諭1, 大隈統2, 古山つや子2, 小宮山隼也2, 関根直哉2, 森山駿一郎2, 中山知之2, 三上綾香2, 安野雄介2 (1.東京医療学院大学保健医療学部リハビリテーション学科理学療法学専攻, 2.武蔵台病院リハビリテーション部)

キーワード:要介護高齢者, 身体活動量, Life Space Assessment

【はじめに,目的】高齢者において身体活動量の向上は,加齢に伴う心身機能の低下を防ぎ,健康寿命の延伸に寄与すると考えられる。身体活動量の評価尺度の一つにLife space assessment(LSA)があり,国際的にも広く利用されている。先行研究によると,LSAに関わる要因として特に歩行能力が重視され,運動機能向上を目的とした運動が推奨されている。しかしこれらは介護予防事業の参加者に焦点を当てた研究であり,大半が一人で外出可能な者である。一方地域在住の要介護高齢者は,歩行能力が不十分であり一人で外出困難な場合が多いため,身体活動量が低下しやすく,閉じこもりや寝たきり状態への進行の恐れが高いと考えられる。本研究の目的は,通所リハビリテーション(リハ)利用者の身体活動量を評価し,心身機能との関連について調査することである。

【方法】通所リハの利用者96名のうち,LSAの評価が可能であった91名を対象とした。平均年齢は79.8歳,性別は女性56名,男性35名,要介護状態区分の内訳は要支援1が9名,要支援2が18名,要介護1が30名,要介護2が20名,要介護3が9名,要介護4が4名,要介護5が1名であった。LSAは原田らが作成したLSA日本語版を用い,インタビュー形式で実施した。心身機能の評価として,運動機能はBerg Balance Scale(BBS)を用いた。これは14の動作課題からなるパフォーマンステストであり,歩行獲得や転倒の予測などに用いられている。BBSは歩行が自立していない例に対しても評価可能であるため,本研究で使用することにした。知的機能評価にはMini-Mental State Examination test(MMSE)を使用した。その他,主観的な健康感と生活満足度をVisual Analog Scaleにより評価した。基本的属性として,年齢,性別,介護度を評価した。分析方法は対象をLSAの得点分布に基づき,A群0~25%,B群26~50%,C群51~75%,D群76~100%の4群に分類した後,年齢,介護度,BBS,MMSE,健康感,満足度について,カイ2乗検定,クラスカル・ウォリス検定および多重比較検定を用いて群間比較した。統計学的分析にはSPSSver20.0を用い,危険率は5%未満とした。

【結果】各群のLSAの中央値はA群24点,B群33点,C群44点,D群61.5点であった。年齢の中央値は同様の順に82歳,83歳,80歳,76歳と群間差を認め,多重比較検定ではD群が他群よりも有意に若年であった。BBSの中央値は同様の順に46点,47点,48.5点,53点と群間差を認め,多重比較ではD群が他群よりも有意に高得点であった。その他の項目については4群間に有意差を認めなかった。

【結論】通所リハ利用者のLSAは,活動量の高い群では良好な運動機能を有していたが,それ以下の活動量レベルでは運動機能に違いは見られなかった。すなわち要介護高齢者の運動機能は,機能が比較的高い場合には身体活動量に影響するが,それよりも低い場合には,運動機能だけでなく,人的・物的環境要因の関与も強くなることが示唆された。