[P-YB-01-1] 高齢入院患者の身体能力に関連する因子の検討
男女別での検討
Keywords:高齢者, 内科疾患, 身体能力
【はじめに,目的】
高齢者の身体能力は,生命予後や医療機関への入院,日常生活動作能力に関連することが報告されている。この傾向は心疾患や呼吸器疾患といった内科疾患患者でも認められている。したがって,内科疾患で入院している高齢者(高齢入院患者)の身体能力を維持させることは重要であり,身体能力に関連する因子を明らかにすることは,その介入内容を検討するうえで有意義である。しかし,高齢入院患者を対象とした報告は少なく,今後さらなる検討が必要である。そこで本研究の目的は,高齢入院患者の身体能力に関連する因子を明らかにすることとした。
【方法】
デザインは横断研究とした。対象は2013年7月~2015年10月に,当院内科病棟に入院した65歳以上の高齢者167例(平均年齢82.2±7.4歳,女性50.9%)であった。除外基準は,運動療法の禁忌に該当する症例,中枢神経疾患を有する症例とした。調査項目として,身体能力の指標にはShort Physical Performance Battery(SPPB)を採用し,Volpatoらの報告を参考にSPPBが4点以下を身体能力低下と定義した。その他の調査項目は,Body Mass Index,Charlson併存疾患指数,血液生化学データ(ヘモグロビン濃度,血清アルブミン,推算糸球体濾過量,C反応性蛋白),長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R),握力,膝伸展筋力,円背指数,それに関節可動域とした。関節可動域は,股関節屈曲と伸展,膝関節屈曲と伸展,足関節背屈と底屈を測定した。統計解析は,身体能力低下を従属変数としたロジスティック回帰分析(ステップワイズ法)を用いた。独立変数は,身体能力低下の有無で有意差を認めた変数とし,その判定には,対応のないT検定とMann-WhitneyのU検定を用いた。また,これらの解析は男女別に実施した。有意水準は5%未満とした。
【結果】
SPPBの中央値(四分位範囲)は,男性が8(4-11)点,女性が5(3-9)点であった。身体能力低下の有無で有意差を認めた変数は,男性が年齢,HDS-R,Charlson併存疾患指数,握力,膝伸展筋力,股関節屈曲可動域,股関節伸展可動域であり,女性が年齢,HDS-R,握力,膝伸展筋力,円背指数,股関節伸展可動域,膝関節伸展可動域,足関節背屈可動域,足関節底屈可動域であった。ロジスティック回帰分析の結果,男性では,膝伸展筋力(単位変化量0.1Nm/kg)が身体能力低下に関連し,そのオッズ比(95%信頼区間)は0.59(0.45-0.77)であった。女性では,握力,膝伸展筋力,それに股関節伸展可動域が関連し,それらのオッズ比(95%信頼区間)は,握力(単位変化量1.0kg)が0.83(0.69-0.99),膝伸展筋力(単位変化量0.1Nm/kg)が0.73(0.54-0.99),股関節伸展可動域(単位変化量5度)が0.26(0.13-0.53)であった。
【結論】
本研究結果から,高齢入院患者の身体能力低下を予防するには,男性では下肢筋力を強化する必要性が示唆され,女性では筋力強化に加えて股関節伸展可動域に着目する必要性が示唆された。
高齢者の身体能力は,生命予後や医療機関への入院,日常生活動作能力に関連することが報告されている。この傾向は心疾患や呼吸器疾患といった内科疾患患者でも認められている。したがって,内科疾患で入院している高齢者(高齢入院患者)の身体能力を維持させることは重要であり,身体能力に関連する因子を明らかにすることは,その介入内容を検討するうえで有意義である。しかし,高齢入院患者を対象とした報告は少なく,今後さらなる検討が必要である。そこで本研究の目的は,高齢入院患者の身体能力に関連する因子を明らかにすることとした。
【方法】
デザインは横断研究とした。対象は2013年7月~2015年10月に,当院内科病棟に入院した65歳以上の高齢者167例(平均年齢82.2±7.4歳,女性50.9%)であった。除外基準は,運動療法の禁忌に該当する症例,中枢神経疾患を有する症例とした。調査項目として,身体能力の指標にはShort Physical Performance Battery(SPPB)を採用し,Volpatoらの報告を参考にSPPBが4点以下を身体能力低下と定義した。その他の調査項目は,Body Mass Index,Charlson併存疾患指数,血液生化学データ(ヘモグロビン濃度,血清アルブミン,推算糸球体濾過量,C反応性蛋白),長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R),握力,膝伸展筋力,円背指数,それに関節可動域とした。関節可動域は,股関節屈曲と伸展,膝関節屈曲と伸展,足関節背屈と底屈を測定した。統計解析は,身体能力低下を従属変数としたロジスティック回帰分析(ステップワイズ法)を用いた。独立変数は,身体能力低下の有無で有意差を認めた変数とし,その判定には,対応のないT検定とMann-WhitneyのU検定を用いた。また,これらの解析は男女別に実施した。有意水準は5%未満とした。
【結果】
SPPBの中央値(四分位範囲)は,男性が8(4-11)点,女性が5(3-9)点であった。身体能力低下の有無で有意差を認めた変数は,男性が年齢,HDS-R,Charlson併存疾患指数,握力,膝伸展筋力,股関節屈曲可動域,股関節伸展可動域であり,女性が年齢,HDS-R,握力,膝伸展筋力,円背指数,股関節伸展可動域,膝関節伸展可動域,足関節背屈可動域,足関節底屈可動域であった。ロジスティック回帰分析の結果,男性では,膝伸展筋力(単位変化量0.1Nm/kg)が身体能力低下に関連し,そのオッズ比(95%信頼区間)は0.59(0.45-0.77)であった。女性では,握力,膝伸展筋力,それに股関節伸展可動域が関連し,それらのオッズ比(95%信頼区間)は,握力(単位変化量1.0kg)が0.83(0.69-0.99),膝伸展筋力(単位変化量0.1Nm/kg)が0.73(0.54-0.99),股関節伸展可動域(単位変化量5度)が0.26(0.13-0.53)であった。
【結論】
本研究結果から,高齢入院患者の身体能力低下を予防するには,男性では下肢筋力を強化する必要性が示唆され,女性では筋力強化に加えて股関節伸展可動域に着目する必要性が示唆された。