[P-YB-01-4] 通所サービスを利用している脳血管障害を有する高齢者の転倒に影響を与える因子
Keywords:転倒, 脳血管障害, 通所サービス
【はじめに,目的】
高齢者を対象とした転倒の関する報告は,脳血管障害の既往のある者を対象から除外していることが多く,脳血管障害の既往のある者を対象とした研究は散見する程度である。本研究の目的は,脳血管障害を有する高齢者を対象に,過去1年間における転倒経験者(以下,転倒群),転倒未経験者(以下,非転倒群)の年齢,Timed up and go test(以下,TUG),CS-30,Barthel Index(以下,BI),老研式活動能力指標(以下,老研式)を用いて,転倒に影響を与える因子を検討することとした。
【方法】
対象者は,脳血管障害を有する在宅高齢者20名(男性10名,女性10名)であった。すべての対象者は質問紙法に回答可能であり,屋内歩行が見守り以上で可能であった。属性は,年齢70.8±9.9歳,身長157.0±10.4cm,体重56.7±9.6kgであった。対象者に過去1年間の転倒経験の有無を聴取し,転倒群と非転倒群に分類した。転倒はGibsonの定義に従い「本人の意思ではなく,地面またはより低い面に身体が倒れること」とした。
評価項目は,年齢,TUG,CS-30,BI,老研式とした。統計学的解析は,転倒経験の有無とし,独立変数を年齢,TUG,CS-30,BI,老研式とした多重ロジスティック回帰分析を用いた。変数の選択には尤度比検定により変数増加法を用いた。なお,多重共線性の問題になるような変数は存在しなかった。統計学的解析には,PASW statistics 18(SPSS Japan)を使用し,危険率5%未満をもって有意と判断した。
【結果】
多重ロジスティック回帰分析の結果,転倒の有無に影響する変数としてCS-30,老研式が選択された(モデルχ2検定でp<0.05)。CS-30のオッズ比は0.553(95%信頼区間0.289~1.060),老研式のオッズ比は0.129(95%信頼区間0.013~1.269)であった。変数の有意性はCS-30がp<0.05,老研式がp<0.01であった。またこのモデルのHosmer-Lemeshow検定の結果はp=0.669で適合していることが示され,予測値と実測値の判別的中率は84.2%であった。
【結論】
脳血管障害の既往のある高齢者と転倒の関連のある指標としてCS-30が選択された。CS-30は立つ座る動作を繰り返すテストであることから,麻痺側下肢の随意性を含めた動作の容易性が転倒に影響をしていると考えた。また,CS-30は下肢最大筋力と正の相関関係があり,下肢最大筋力の低下はADL,基本動作,移動能力低下との関連性が強いことが報告されている。これらのことから,CS-30測定値が低い者は,基本的な動作能力が低いと考えられ転倒に結び付くリスクが高くなると考えた。また,先行研究では脳血管患者のCS-30と10m最大歩行速度が負の相関であることが報告されている。以上のことからも,CS-30の回数が転倒の有無に影響を及ぼしたと考えられる。
また,転倒経験のある者は,転倒後症候群による自己効力感の低下や,活動範囲の狭小化などが原因で老健式が選択されたと推察した。
高齢者を対象とした転倒の関する報告は,脳血管障害の既往のある者を対象から除外していることが多く,脳血管障害の既往のある者を対象とした研究は散見する程度である。本研究の目的は,脳血管障害を有する高齢者を対象に,過去1年間における転倒経験者(以下,転倒群),転倒未経験者(以下,非転倒群)の年齢,Timed up and go test(以下,TUG),CS-30,Barthel Index(以下,BI),老研式活動能力指標(以下,老研式)を用いて,転倒に影響を与える因子を検討することとした。
【方法】
対象者は,脳血管障害を有する在宅高齢者20名(男性10名,女性10名)であった。すべての対象者は質問紙法に回答可能であり,屋内歩行が見守り以上で可能であった。属性は,年齢70.8±9.9歳,身長157.0±10.4cm,体重56.7±9.6kgであった。対象者に過去1年間の転倒経験の有無を聴取し,転倒群と非転倒群に分類した。転倒はGibsonの定義に従い「本人の意思ではなく,地面またはより低い面に身体が倒れること」とした。
評価項目は,年齢,TUG,CS-30,BI,老研式とした。統計学的解析は,転倒経験の有無とし,独立変数を年齢,TUG,CS-30,BI,老研式とした多重ロジスティック回帰分析を用いた。変数の選択には尤度比検定により変数増加法を用いた。なお,多重共線性の問題になるような変数は存在しなかった。統計学的解析には,PASW statistics 18(SPSS Japan)を使用し,危険率5%未満をもって有意と判断した。
【結果】
多重ロジスティック回帰分析の結果,転倒の有無に影響する変数としてCS-30,老研式が選択された(モデルχ2検定でp<0.05)。CS-30のオッズ比は0.553(95%信頼区間0.289~1.060),老研式のオッズ比は0.129(95%信頼区間0.013~1.269)であった。変数の有意性はCS-30がp<0.05,老研式がp<0.01であった。またこのモデルのHosmer-Lemeshow検定の結果はp=0.669で適合していることが示され,予測値と実測値の判別的中率は84.2%であった。
【結論】
脳血管障害の既往のある高齢者と転倒の関連のある指標としてCS-30が選択された。CS-30は立つ座る動作を繰り返すテストであることから,麻痺側下肢の随意性を含めた動作の容易性が転倒に影響をしていると考えた。また,CS-30は下肢最大筋力と正の相関関係があり,下肢最大筋力の低下はADL,基本動作,移動能力低下との関連性が強いことが報告されている。これらのことから,CS-30測定値が低い者は,基本的な動作能力が低いと考えられ転倒に結び付くリスクが高くなると考えた。また,先行研究では脳血管患者のCS-30と10m最大歩行速度が負の相関であることが報告されている。以上のことからも,CS-30の回数が転倒の有無に影響を及ぼしたと考えられる。
また,転倒経験のある者は,転倒後症候群による自己効力感の低下や,活動範囲の狭小化などが原因で老健式が選択されたと推察した。