第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本予防理学療法学会 一般演題ポスター
予防P01

Fri. May 27, 2016 11:50 AM - 12:50 PM 第11会場 (産業振興センター 2階 セミナールームA)

[P-YB-01-5] 在宅維持期脳卒中者におけるmodified Gait Efficacy Scaleとmodified Fall Efficacy Scaleに関連する因子の検討

鹿島恵理, 粟飯原里美, 松田直樹, 稲田亨 (進和会旭川リハビリテーション病院リハビリテーション部)

Keywords:在宅維持期脳卒中者, modified Gait Efficacy Scale, modified Fall Efficacy Scale

【はじめに,目的】

近年,在宅高齢者や在宅脳卒中者の転倒や身体活動量に関連する因子として,転倒関連自己効力感が注目されている。自己効力感とは,動作遂行に対する自信の程度を表す概念である(Bandura, et al., 1977)。転倒を未然に防ぎ,身体活動量を確保するためには,転倒関連自己効力感を評価することは重要であると考える。これまで転倒関連自己効力感の評価には,屋内外の日常生活動作に関する設問から構成されるmodified Fall Efficacy Scale(mFES)(Hill, et al., 1996)が多く用いられてきた。一方,歩行に関する設問を多く含む質問紙として,modified Gait Efficacy Scale(mGES)が開発され(Newell, et al., 2012),在宅高齢者における妥当性が報告されている(牧迫ら,2013)。mGESとmFESはどちらも転倒関連自己効力感の質問紙であるが,設問内容が異なるため自己効力感の異なる側面を評価している可能性があると推察する。このmGESとmFESで評価できる転倒関連自己効力感が異なるとすれば,臨床上目的に応じて使い分ける必要があると考える。よって本研究の目的は,在宅維持期脳卒中者において,mGESとmFESにより評価された転倒関連自己効力感が,身体機能やADL能力,生活空間の広がりとどのように関連しているかをそれぞれ検討することとした。


【方法】

対象は,当院外来リハビリテーションに通院中の在宅維持期脳卒中者の内,補装具使用の有無は問わずに屋内外歩行が自立しており,本研究に同意を得られた60名とした(平均61.1±12.5歳)。調査時期は平成27年5月~6月とし,調査項目は質問紙調査および身体機能調査とした。質問紙調査としてmGES,mFES,生活空間の広がりの指標であるLifeSpace Assessment(LSA),Barthel Index(BI)を実施した。身体機能調査として快適歩行速度,30秒間立ち上がりテスト(CS30),Functional Reach Test(FRT),Timed Up andGo Test(TUG),6分間歩行距離(6MD)を実施した。mGES,mFESとその他の調査項目との相関を検討するために,Spearmenの順位相関係数を算出した。有意水準は5%とした。


【結果】

mGESと有意な相関があった項目は,LSA(r=0.34),BI(r=0.27),快適歩行速度(r=0.31),CS30(r=0.25),FRT(r=0.38),TUG(r=-0.31),6MD(r=0.33)であった。mFESと有意な相関があった項目は,LSA(r=0.40),BI(r=0.39),CS30(r=0.25),FRT(r=0.45),TUG(r=-0.28)であった。


【結論】

本研究結果から,LSA,BI,CS30,FRT,TUGはmGES,mFESのいずれとも有意な相関を示した。一方,快適歩行速度,6MDはmGESのみと有意な相関を示した。このことから,mGESは歩行能力と強く関連した転倒関連自己効力感の質問紙であることが示唆された。よってmGESとmFESは同じ自己効力感でも異なる側面を評価している可能性があり,臨床上使い分ける必要があると考えられる。