[P-YB-03-2] 初期もの忘れ外来患者の身体的フレイルが精神・心理面と社会的側面に与える影響
キーワード:フレイル, サルコペニア, 高齢者
【はじめに】近年,老年医学の分野でフレイルの重要性が注目されている。フレイルは身体的問題のみならず精神・心理的,社会的問題なども含む概念であり,その中の1つでも虚弱の状態になるとフレイルサイクルの悪循環によって要介護状態に陥る可能性が高いと言われている。今回,初期もの忘れ外来患者の身体的フレイルの有無が,その他のフレイルにどのような影響を与えているのか調査を行った。
【方法】対象は2012年7月~2015年9月の間に,当院初期もの忘れ外来を受診した高齢者148名(男性70名,女性78名)平均年齢は77.5±5.3歳。全例独歩可能で日常生活は自立していた。理学療法士が転倒歴や運動習慣を聴取し,握力,大腿四頭筋筋力,10m歩行,TUG,開眼片脚立位,重心動揺検査(開眼静止立位・Cross Test)を測定した。そして身体的フレイルの判断は,運動器不安定症の診断基準(開眼片脚立位時間15秒未満またはTUG11秒以上)とAWGSが提唱しているサルコペニア診断基準(握力:男性26kg未満,女性18kg未満または歩行スピード0.8m/秒)の4項目中1つでも該当した患者を身体的フレイルありと判断した。精神・心理面においてはHDS-R,MMSEの各スコアで評価し,社会的側面に関してはLife-space assessment(以下LSA),Lubben Social Network Scale-6(以下LSNS-6),Falls Efficacy Scale(以下FES)を使用した。統計解析は,身体的フレイルの有無により分けられた2群間の比較を,スチューデントのt検定またはχ2検定を用い5%未満をもって有意差ありと判断した。
【結果】全対象者の握力は25.2±7.9kg,大腿四頭筋筋力体重比は0.44±0.14kgf/kg,10m歩行は6.9±2.6秒(1.4m/秒),TUGは8.1±2.8秒,開眼片脚立位は18.7±11.7秒,重心動揺検査の開眼静止立位総軌跡長は38.3±15.7cm,Cross Testの左右COP最大振幅は15.6±6.5cm,前後COP最大振幅は10.2±3.2cm,HDS-Rは23.0±4.6点,MMSEは25.6±3.3点,LSAは89.6±28.8点,LSNS-6は15.4±6.8点,FESは35.4±5.3点だった。身体的フレイルに該当する患者は71名(48%)で,4項目該当が6名,3項目が7名,2項目が22名,1項目が36名であった。身体的フレイルの有無で2群に分け比較すると,転倒歴と運動習慣を含めた運動機能検査全ての項目で有意差を認めた。また精神・心理面のHDS-R(p<0.01)MMSE(p<0.05)ともに有意差を認め,社会的側面のLSA(p<0.01),LSNS-6(p<0.05),FES(p<0.001)でも全ての項目で有意差を認めた。
【結論】身体的フレイルの患者は,フレイルサイクルの悪循環により精神・心理面や社会的側面にも影響していることが示唆された。今後は身体的フレイルの高齢者を早期に発見し適切な介入をすることにより,生活機能の維持・向上を図っていくことが必要である。そのため介護予防分野における理学療法士は,フレイルの一次,二次予防の重要性を認識し,フレイルサイクルを回さない指導を行う必要がある。
【方法】対象は2012年7月~2015年9月の間に,当院初期もの忘れ外来を受診した高齢者148名(男性70名,女性78名)平均年齢は77.5±5.3歳。全例独歩可能で日常生活は自立していた。理学療法士が転倒歴や運動習慣を聴取し,握力,大腿四頭筋筋力,10m歩行,TUG,開眼片脚立位,重心動揺検査(開眼静止立位・Cross Test)を測定した。そして身体的フレイルの判断は,運動器不安定症の診断基準(開眼片脚立位時間15秒未満またはTUG11秒以上)とAWGSが提唱しているサルコペニア診断基準(握力:男性26kg未満,女性18kg未満または歩行スピード0.8m/秒)の4項目中1つでも該当した患者を身体的フレイルありと判断した。精神・心理面においてはHDS-R,MMSEの各スコアで評価し,社会的側面に関してはLife-space assessment(以下LSA),Lubben Social Network Scale-6(以下LSNS-6),Falls Efficacy Scale(以下FES)を使用した。統計解析は,身体的フレイルの有無により分けられた2群間の比較を,スチューデントのt検定またはχ2検定を用い5%未満をもって有意差ありと判断した。
【結果】全対象者の握力は25.2±7.9kg,大腿四頭筋筋力体重比は0.44±0.14kgf/kg,10m歩行は6.9±2.6秒(1.4m/秒),TUGは8.1±2.8秒,開眼片脚立位は18.7±11.7秒,重心動揺検査の開眼静止立位総軌跡長は38.3±15.7cm,Cross Testの左右COP最大振幅は15.6±6.5cm,前後COP最大振幅は10.2±3.2cm,HDS-Rは23.0±4.6点,MMSEは25.6±3.3点,LSAは89.6±28.8点,LSNS-6は15.4±6.8点,FESは35.4±5.3点だった。身体的フレイルに該当する患者は71名(48%)で,4項目該当が6名,3項目が7名,2項目が22名,1項目が36名であった。身体的フレイルの有無で2群に分け比較すると,転倒歴と運動習慣を含めた運動機能検査全ての項目で有意差を認めた。また精神・心理面のHDS-R(p<0.01)MMSE(p<0.05)ともに有意差を認め,社会的側面のLSA(p<0.01),LSNS-6(p<0.05),FES(p<0.001)でも全ての項目で有意差を認めた。
【結論】身体的フレイルの患者は,フレイルサイクルの悪循環により精神・心理面や社会的側面にも影響していることが示唆された。今後は身体的フレイルの高齢者を早期に発見し適切な介入をすることにより,生活機能の維持・向上を図っていくことが必要である。そのため介護予防分野における理学療法士は,フレイルの一次,二次予防の重要性を認識し,フレイルサイクルを回さない指導を行う必要がある。