第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本予防理学療法学会 一般演題ポスター
予防P03

2016年5月27日(金) 11:50 〜 12:50 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-YB-03-4] 認知機能障害を有する地域在住高齢者の歩行能力と通所介護職員の歩行の介助負担との関連

橋立博幸1, 原田和宏2, 佐藤けさ枝3, 深澤雄希3 (1.杏林大学保健学部理学療法学科, 2.吉備国際大学保健医療福祉学部理学療法学科, 3.医療法人笹本会おおくにいきいき通所介護)

キーワード:高齢者, 歩行, 介助負担

【はじめに,目的】

在宅高齢者では,日常生活動作(ADL)の自立度低下と介助負担増加が家族介護者の介護負担感増加を引き起こすため,ADLの改善とともに家族介護者の介護負担軽減が重要な課題となる。ADLの介助負担はADLの各項目によって程度が異なるため,ADLの介助負担軽減を図る効果的な介入を実施するには,各ADLに応じた介助負担に影響をおよぼす要因を明らかにすることが必要である。本研究では,認知機能障害を有する地域在住高齢者の主要なADLである歩行能力と歩行の介助負担との関連について検証することを目的とした。


【方法】

認知症症状の重症度検査clinical dementia rating scale(CDR)が0.5以上で通所介護施設を利用する65歳以上の高齢者72人(平均年齢84.3歳)を対象に,歩行の介助負担感,歩行能力(Barthel indexの歩行に関する下位項目(BI歩行),functional ambulation category(FAC),timed up and go test(TUG)),認知機能(mini-mental state examination(MMSE))を横断的に調査した。歩行の介助負担感は,通所介護利用時における対象者に対する歩行の介助負担の程度をvisual analogue scaleを用いて10点満点(まったく介助負担がない0点~非常に介助負担が重度である10点)で通所介護職員から聴取した。


【結果】

歩行介助負担感の有無によって対象者を歩行介助負担なし群(歩行介助負担感0点,n=22)と歩行介助負担あり群(歩行介助負担感1点以上,n=49)の2群に分けて各指標を群間比較した結果,歩行介助負担あり群は歩行介助負担なし群に比べて,BI歩行,FAC,TUGの成績が有意に低かった。CDRおよびMMSEに有意な群間差は認められなかった。歩行介助負担感と他の指標とのSpearman順位相関係数を算出した結果,歩行介助負担感とBI歩行(rs=-0.624),TUG(rs=0.748),FAC(rs=-0.645)との間に有意な相関を認めた。さらに,歩行介助負担の有無(有:1,無:0)を従属変数,歩行の各指標を説明変数としたロジスティック回帰分析を,年齢,CDR,MMSEを調整して実施した結果,歩行介助負担に対してFAC(オッズ比(OR)=0.264,95%信頼区間(CI)=0.079-0.884),TUG(OR=1.751,95%CI=1.249-2.454)が有意な関連項目として抽出された。


【結論】

歩行の介助負担に対して,歩行自立度を示すFACとともにTUGと密接な関連を示したことから,歩行自立度の低下や,起立,歩行,方向転換,着座の一連の移動動作における速度や安定性の低下によって歩行介助負担が増加すると考えられた。また,認知機能障害を有する要支援・要介護高齢者においても,歩行介助負担の軽減を検討する際に,総合的な歩行自立度だけでなく実際の歩行のパフォーマンスを考慮することが必要であると考えられた。