第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本予防理学療法学会 一般演題ポスター
予防P03

2016年5月27日(金) 11:50 〜 12:50 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-YB-03-5] 認知症患者に対するセラピストの自己効力感尺度の評価および検証

野倉圭1,2, 丸山仁司3, 内山結城4, 安西智5 (1.東京白十字病院リハビリテーション科, 2.国際医療福祉大学大学院保健医療学専攻理学療法学分野, 3.国際医療福祉大学保健医療学部理学療法学科, 4.老人保健施設東京ばんなん白光園, 5.南大沢メディカルプラザ)

キーワード:認知症, 自己効力感, セラピスト

【はじめに,目的】自己効力感理論は心理学者Banduraが唱えたものであり,個人の行動達成に影響を及ぼすと言われている。運動指導者の自己効力感は運動実施者の自己効力感に大きな影響を及ぼすといわれ,セラピストの自己効力感向上は患者の身体活動・運動促進が期待できる。リハビリ病棟患者の約3割が認知症を有する時代。認知症患者にリハビリを行うことに難渋することが増加し,セラピスト自身の自己効力感減弱をきたしている印象を持つ。本研究の目的はセラピストを対象として認知症にたいする自己効力感尺度を実施し,標準データを収集するとともに,その信頼性を検討することである。


【方法】調査の対象となった被験者は,認知症患者に対してリハビリを行ったことのあるセラピスト39名(男性21名,女性18名)である。その年齢構成は34.1±6.3歳,職種はPT・OT・ST,経験年数は6.6±4.1年,勤務先は病院とそれ以外(老健,クリニック)で分類を行い,これらの被験者を対象に認知症自己効力感促進尺度を測定し各項目の得点及び合計点を算出した。本尺度は,Banduraの自己効力感を形成する4情報に当てはまる質問を4問作成し,その項目は「全然そう思わない」を1点,「あまりそう思わない」を2点,「少しそう思う」を3点,「よくそう思う」を4点として,4段階で素点化を行った。統計処理はSPSS Statistics Version21を使用,有意水準は5%未満とした。


【結果】勤務先は病院22名,老健6名,クリニック11名,職種はPT29名,OT8名,ST2名であった。評価尺度の内的一貫性の確認には主成分分析を行い第一主成分の内容はそれぞれ0.84,0.87,0.89,0.76,固有値1.80,寄与率0.71であった。尺度の信頼性を示すα係数は0.857となり,内的整合性が確認された。尺度の合計は平均11.1±2.6点,各項目の平均は遂行行動の達成2.6±0.7,言語的説得2.4±0.8,生理的情動的状態,2.8±0.9,言語的説得3.5±0.7であった。また,各項目の比較にはKurasukal-Wallis検定を行い,代理的体験に対してその他の要因に有意な差(P<0.05)がみとめられた。各項目の関係性にはSpearmanの順位相関係数を行い,施設と合計点数に有意な相関が認められ(γ=0.363,P<0.05),経験年数と合計点数および言語的説得の因子間に有意な相関が認められた(γ=0.318,0.325,P<0.05)。また,職種と生理的情動的状態および代理体験の因子間でも有意な相関がみとめられた(γ=0.343,P<0.05,γ=0.452,P<0.01)。


【結論】本研究で作成された尺度は内的一貫性および信頼性が確認され,セラピストの認知症患者に対する自己効力感のデータを収集,4項目のうち言語的説得の点数が低い傾向を確認できた。自己効力感は経験年数や職種,環境によって違いがあると言われており,本研究でもその傾向,関連性が認められた。今後は更に詳細な検討が必要であると考える。