[P-YB-04-3] 心理社会的要因に重点を置いた指導が看護・介護業務に従事する者に与える影響
予防・産業分野での腰痛症対策における理学療法士の役割拡大を目指して
Keywords:腰痛症, 心理社会的要因, 指導
【はじめに,目的】
腰痛症の要因は様々であるが,大別すると物を持ち上げるなどの直接腰部に負担をかける生体力学的要因と,人間関係や心理ストレスなどの心理社会的要因の2つが報告されている。以前から理学療法士は生体力学的要因に対する指導は行ってきたが,心理社会的要因に配慮していたとは言い難い。本研究の目的は腰痛多発職種である看護師,介護士に対して理学療法士が心理社会的要因に重点を置いた腰痛症指導を行った際に,心理社会的要因の中でも特に腰痛症に強い影響与えると報告されている恐怖回避思考が即時的に軽減するかを検討することで,理学療法士によっても心理社会的要因に介入できる可能性を明らかにすることである。
【方法】
対象は施設責任者より研究実施の承諾が得られた病院・介護老人福祉施設に勤務し,1年以上介護・看護業務に従事する者42名(看護師30名,介護士12名)である。方法は研究協力の承諾が得られた各病院に病院・介護老人福祉施設に勤務する看護師・介護士に対して,専門機関によって監修された資料をもとに心理社会的要因に配慮した腰痛症に対する集団指導を行い,指導前後の腰痛症に対する考え方の即時的な変化を質問紙によって調査した。なお,集団指導は1回のみ実施し,時間は60分間行った。質問紙は,集団指導の前後に10分間の時間を設けて対象者に記載させた。測定項目は,基本属性として,年齢,性別を,また経験年数,腰痛症の既往,恐怖回避思考の程度を示す日本語版Fear-Avoidance Belief Questionnaire(以下,FABQ)である。統計学的解析はWillcoxon符号付順位検定を使用し,FABQの指導前後の比較を行った。
【結果】
対象者の指導前のFABQの中央値(四分位範囲)は前半項目が19(13-22)点,後半項目が32.5(16.25-38)点,合計点が48(26.75-61)点である。指導後のFABQは前半項目が14(4-19)点,後半項目が20.5(5.25-26)点,合計点が33(17-42)点である。Willcoxon符号付順位検定の結果,全項目で指導前よりも指導後の方がFABQの得点が有意に改善していた。
【結論】
結果から,集団指導により恐怖回避思考は低下することが示された。本研究の集団指導で使用した資料は専門機関より監修された資料から許可を得て転載しており,指導内容はエビンデンスに基づく妥当性の高い内容であると思われる。エビデンスに基づく指導により腰痛症が改善することは既に報告されており,本研究も先行研究を支持する結果となった。以上より,理学療法士による集団指導によって即時的に恐怖回避思考が減少することを示せたことは,職場における腰痛症対策に理学療法士が有用である可能性を示唆でき,意義があると考える。従来の理学療法士が行ってきた持ち上げ方や介助方法の指導など生体力学的要因だけでなく,心理社会的要因にも介入可能であることが示されれば,理学療法士が産業医と連携しながら予防医療,産業衛生分野において腰痛症予防の中心として活躍する可能性も考えられる。
腰痛症の要因は様々であるが,大別すると物を持ち上げるなどの直接腰部に負担をかける生体力学的要因と,人間関係や心理ストレスなどの心理社会的要因の2つが報告されている。以前から理学療法士は生体力学的要因に対する指導は行ってきたが,心理社会的要因に配慮していたとは言い難い。本研究の目的は腰痛多発職種である看護師,介護士に対して理学療法士が心理社会的要因に重点を置いた腰痛症指導を行った際に,心理社会的要因の中でも特に腰痛症に強い影響与えると報告されている恐怖回避思考が即時的に軽減するかを検討することで,理学療法士によっても心理社会的要因に介入できる可能性を明らかにすることである。
【方法】
対象は施設責任者より研究実施の承諾が得られた病院・介護老人福祉施設に勤務し,1年以上介護・看護業務に従事する者42名(看護師30名,介護士12名)である。方法は研究協力の承諾が得られた各病院に病院・介護老人福祉施設に勤務する看護師・介護士に対して,専門機関によって監修された資料をもとに心理社会的要因に配慮した腰痛症に対する集団指導を行い,指導前後の腰痛症に対する考え方の即時的な変化を質問紙によって調査した。なお,集団指導は1回のみ実施し,時間は60分間行った。質問紙は,集団指導の前後に10分間の時間を設けて対象者に記載させた。測定項目は,基本属性として,年齢,性別を,また経験年数,腰痛症の既往,恐怖回避思考の程度を示す日本語版Fear-Avoidance Belief Questionnaire(以下,FABQ)である。統計学的解析はWillcoxon符号付順位検定を使用し,FABQの指導前後の比較を行った。
【結果】
対象者の指導前のFABQの中央値(四分位範囲)は前半項目が19(13-22)点,後半項目が32.5(16.25-38)点,合計点が48(26.75-61)点である。指導後のFABQは前半項目が14(4-19)点,後半項目が20.5(5.25-26)点,合計点が33(17-42)点である。Willcoxon符号付順位検定の結果,全項目で指導前よりも指導後の方がFABQの得点が有意に改善していた。
【結論】
結果から,集団指導により恐怖回避思考は低下することが示された。本研究の集団指導で使用した資料は専門機関より監修された資料から許可を得て転載しており,指導内容はエビンデンスに基づく妥当性の高い内容であると思われる。エビデンスに基づく指導により腰痛症が改善することは既に報告されており,本研究も先行研究を支持する結果となった。以上より,理学療法士による集団指導によって即時的に恐怖回避思考が減少することを示せたことは,職場における腰痛症対策に理学療法士が有用である可能性を示唆でき,意義があると考える。従来の理学療法士が行ってきた持ち上げ方や介助方法の指導など生体力学的要因だけでなく,心理社会的要因にも介入可能であることが示されれば,理学療法士が産業医と連携しながら予防医療,産業衛生分野において腰痛症予防の中心として活躍する可能性も考えられる。