[P-YB-04-5] 臨床検査技師の労働環境改善における理学療法士としての関わり
キーワード:健康増進, 実態調査, 運動指導
【はじめに,目的】
厚生労働省は,平成25年に保健衛生産業における腰痛対策を推進していくため「職場における腰痛予防対策指針」を改訂した。その背景として,職場での腰痛は休業につながり,生産性低下の要因になることが挙げられる。A病院でも超音波検査に従事する臨床検査技師の中で,頚部痛や腰痛などの身体症状から仕事に支障をきたしていた。そこで病院全体として労働環境の改善に取り組む一環として,理学療法士の観点から超音波検査時の身体的負担の評価と運動指導や環境調整の助言を行った。本研究の目的は,超音波検査に従事する臨床検査技師の身体症状の実態調査と,運動指導や環境調整による介入効果の検討とした。
【方法】
対象は,A病院で超音波検査に従事する8名(男性3名,女性5名)で,平均年齢は45.3歳で,超音波検査の平均経験年数17.3年であった。方法は,労働環境の現状を把握するために調査①を行い,そこで得られた結果をもとに対象者に対して現状の報告,運動の指導,そして環境調整の助言を行った。そして,介入効果の判定を行うために調査②を実施した。調査①,②では,肩こり,腰痛,精神的ストレスなどの身体症状の10段階評価や,クラウス・ウェーバー変法を用いた脊柱機能検査,そして腰痛に対する心理的要因の評価としてFear Avoidance Beliefs Questionnaire(以下FABQ)とKeele STarT Backスクリーニングツールを用いた調査を行った。運動の指導は,超音波検査の合間に行うことができる肩こり,腰痛対策の運動について行い,運動方法の写真を検査室に掲示した。環境調整の助言は,検査を行うベッドの高さ調整や白衣の変更などを行った。
【結果】
作業中の身体症状は,肩こり,背中や腰の疲れ,腰痛,精神的ストレス,頭痛などの訴えが多かった。調査②では肩こり,背中や腰の疲れ,腰痛,頭痛は改善傾向であった。脊柱機能検査は著変なかった。FABQは,恐怖回避思考が強いとされる15点以上の方が調査①では7名であったが,調査②では4名に減少した。また,Keele STarT Backスクリーニングツールは,調査①では高リスク2名,中リスク2名,低リスク4名であったが,調査②では8名全員が低リスクとなった。
【結論】
福祉・医療分野では腰痛対策が注目されているが,介護・看護職に比べて移乗や清拭などの介助動作が少ない超音波検査に従事する臨床検査技師においても,腰痛をはじめとする症状を呈していることが明らかになった。その要因として,環境調整や運動指導により症状が改善した対象者がいることから,超音波検査時の姿勢や動作が影響している可能性が考えられた。また,心理的要因の変化も症状の改善の一助になったと推察される。理学療法士による病院職員の労働環境改善への取り組みは必要であるが,一方的な視点の介入ではなく,今後は産業医,保健師など他職種と連携を取りながら可能性を広げていくことが必要と考える。
厚生労働省は,平成25年に保健衛生産業における腰痛対策を推進していくため「職場における腰痛予防対策指針」を改訂した。その背景として,職場での腰痛は休業につながり,生産性低下の要因になることが挙げられる。A病院でも超音波検査に従事する臨床検査技師の中で,頚部痛や腰痛などの身体症状から仕事に支障をきたしていた。そこで病院全体として労働環境の改善に取り組む一環として,理学療法士の観点から超音波検査時の身体的負担の評価と運動指導や環境調整の助言を行った。本研究の目的は,超音波検査に従事する臨床検査技師の身体症状の実態調査と,運動指導や環境調整による介入効果の検討とした。
【方法】
対象は,A病院で超音波検査に従事する8名(男性3名,女性5名)で,平均年齢は45.3歳で,超音波検査の平均経験年数17.3年であった。方法は,労働環境の現状を把握するために調査①を行い,そこで得られた結果をもとに対象者に対して現状の報告,運動の指導,そして環境調整の助言を行った。そして,介入効果の判定を行うために調査②を実施した。調査①,②では,肩こり,腰痛,精神的ストレスなどの身体症状の10段階評価や,クラウス・ウェーバー変法を用いた脊柱機能検査,そして腰痛に対する心理的要因の評価としてFear Avoidance Beliefs Questionnaire(以下FABQ)とKeele STarT Backスクリーニングツールを用いた調査を行った。運動の指導は,超音波検査の合間に行うことができる肩こり,腰痛対策の運動について行い,運動方法の写真を検査室に掲示した。環境調整の助言は,検査を行うベッドの高さ調整や白衣の変更などを行った。
【結果】
作業中の身体症状は,肩こり,背中や腰の疲れ,腰痛,精神的ストレス,頭痛などの訴えが多かった。調査②では肩こり,背中や腰の疲れ,腰痛,頭痛は改善傾向であった。脊柱機能検査は著変なかった。FABQは,恐怖回避思考が強いとされる15点以上の方が調査①では7名であったが,調査②では4名に減少した。また,Keele STarT Backスクリーニングツールは,調査①では高リスク2名,中リスク2名,低リスク4名であったが,調査②では8名全員が低リスクとなった。
【結論】
福祉・医療分野では腰痛対策が注目されているが,介護・看護職に比べて移乗や清拭などの介助動作が少ない超音波検査に従事する臨床検査技師においても,腰痛をはじめとする症状を呈していることが明らかになった。その要因として,環境調整や運動指導により症状が改善した対象者がいることから,超音波検査時の姿勢や動作が影響している可能性が考えられた。また,心理的要因の変化も症状の改善の一助になったと推察される。理学療法士による病院職員の労働環境改善への取り組みは必要であるが,一方的な視点の介入ではなく,今後は産業医,保健師など他職種と連携を取りながら可能性を広げていくことが必要と考える。