第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本予防理学療法学会 一般演題ポスター
予防P05

2016年5月27日(金) 15:20 〜 16:20 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-YB-05-5] 変形性膝関節症患者における身体活動の頻度および継続期間の違いによるQOLの比較:横断研究

―トランスセオレティカルモデルに基づく疾患特異的QOLおよび健康関連QOLの調査研究―

出口直樹1, 平川善之2, 中嶋正明3 (1.福岡リハ整形外科クリニック, 2.福岡リハビリテーション病院, 3.吉備国際大学大学院保健科学研究科)

キーワード:トランスセオレィカルモデル, 変形性膝関節症, QOL

【はじめに,目的】不活動は健康障害に起因し世界的な問題である。変形性膝関節症(以下,膝OA)における不活動の割合は48.9%と多く,本邦では早期予防が必要な運動器疾患とされている。膝OA患者の健康障害に対し,中等度の身体活動が強く推奨されている。しかし,身体活動の頻度や継続期間が健康関連QOLに与える影響は不明である。したがって,本研究の目的は,膝OA患者をトランスセオレティカルモデル(以下,TTM)に基づき不活動,週150分の身体活動実施の有無,週150分の身体活動を6ヵ月以上継続の4群のサブグループに分類しQOLを比較した。


【方法】調査期間は,平成25年3月15日~10月30日で9施設の多施設共同研究とした。対象は,50歳以上で外来通院している膝OA患者で歩行が自立している者のうち,中枢疾患および認知症を有する者,膝術後患者,生活で他人からの介護を必要とする者を除く198名にアンケートを配布した後,郵送法により回収し,そのうち返信があり記入の漏れがない117名(平均年齢73.1±8.5歳,BMI24.3±3.3,男性11名,女性106名)とした。アンケート調査は無記名自記入質問紙法とした。評価項目は,TTMに基づき行動変容stageを調査し,前熟考期および熟考期を不活動群,準備期を実施群,実行期を定着群,維持期を継続群の4群に分類した。QOLの評価項目は,疾患特異的QOLと健康関連QOLを調査した。疾患特異的QOLは,Western Ontario and McMaster Universities osteoarthritis index(以下,WOMAC),健康関連QOLはSF-36v2を用いて下位尺度(身体機能:PF,日常役割機能身体:RP,身体の痛み:BP,全体的健康感:GH,活力:VT,社会生活機能:SF,日常役割機能精神:RE,心の健康:MH)を調査した。統計学的処理は,4群間におけるWOMACおよびSF-36v2下位項目の比較を年齢および性別を調整変数とした共分散分析のBonferroni法にて分析し有意水準は5%とした。


【結果】内訳は不活動群40名(34.2%),実施群22名(18.8%),定着群17名(14.5%),継続群38名(32.5%)であった。WOMACは,不活動群と比較し継続群でのみ有意に高かった(p<0.01)。PF,RPは,不活動群と比較し継続群で有意に高く(p<0.01),実施群と比較しても継続群で有意に高かった(p<0.05)。VTは,不活動群と比較し定着群(p<0.05)および継続群(p<0.01)で有意に高かった。BP,RE,MHは,不活動群と比較し継続群でのみ有意に高かった(p<0.05)。GHおよびSFでは4群間に有意な差を認めなかった。

【結論】QOLに対する身体活動の頻度や継続期間の関係は,健康障害を引き起こすとされる不活動者と比較し身体活動を実施するだけでは差を認めず6ヵ月以上の継続で有意に高かったがGHおよびSFは差を認めなかった。したがって,疾患特異的QOLおよび健康関連QOL向上には身体活動を実施だけではなく6ヵ月以上継続させるような働きかけが重要と思われるが,GHやSFは身体活動以外の要因が関連するかもしれない。