第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本予防理学療法学会 一般演題ポスター
予防P06

Fri. May 27, 2016 3:20 PM - 4:20 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-YB-06-4] 当院救急入院患者の退院遅延因子の検討

小柳圭一1,2, 岩田健太郎1, 西原浩真1, 横井佑樹1, 坂本裕規1, 影山智広1, 門浄彦1, 田内都子1, 蔵谷鷹大1, 沖侑太郎3, 藤本由香里3, 石川朗3, 椿淳裕4, 大西秀明4 (1.神戸市立医療センター中央市民病院, 2.新潟医療福祉大学大学院医療福祉学専攻博士後期課程, 3.神戸大学大学院保健学研究科, 4.新潟医療福祉大学理学療法学科)

Keywords:退院遅延因子, 入院時ADL, 介入基準

【はじめに,目的】

近年,急性期病院の在院日数は短縮の一途をたどっている。急性期からの理学療法介入が在院日数の短縮をもたらし,医療費を節約すると報告されている。このことから,急性期病院では,理学療法介入の必要性が高まっている。しかし,在院日数の短縮という観点から,どういった症例に理学療法を集中的に提供すべきか,客観的な指標は明らかでない。

本研究の目的は,在院日数の短縮という観点から当院入院患者の退院遅延因子を明らかにし,客観的な指標に基づいた当院での理学療法介入を目指すものである。

【方法】

対象は,平成26年5月~12月までに当院に入院した症例のうち,予定入院症例および欠損値のある症例を除いた3882例とした。全例の在院日数の平均値である15日をカットオフ値とし,早期退院群,退院遅延群の2群に分けた。2群間の年齢,体重,身長,喫煙指数,WHOのICD10コードに基づいた主傷病,合併疾患の数,入院時の移乗動作に対する介助の有無,入院時のトイレ動作に対する介助の有無,入院時の歩行動作に対する介助の有無,理学療法介入率について単変量解析を行った。その後,退院遅延の有無を従属変数,理学療法介入を除いたその他の因子を独立変数として,退院遅延の有無に及ぼす影響について多重ロジスティック回帰分析を用いて検討した。

【結果】

単変量解析の結果,2群間にて年齢(60.2±20.9歳,66.1±17.9歳),理学療法介入率(24.5%,73.2%)に有意差を認めた(p<0.01)。また,多重ロジスティック回帰分析の結果,退院遅延に関与する因子として,呼吸器系疾患(オッズ非;1.775,95%信頼区間;1.153-2.733),入院時のトイレ動作の介助(1.589,1.163-2.170),入院時の移乗動作の介助(1.543,1.145-2.078),合併疾患の数(0.784,0.737-0.834),尿路器系疾患(0.524,0.316-0.870),皮膚および皮下組織疾患(0.330,0.182-0.598)が抽出された(p<0.01)。

【結論】

当院では早期退院群と比較して,退院遅延群に対する理学療法介入率が有意に高値であった。また,退院遅延群では,理学療法介入率が高いことから,在院日数短縮のために限られた人数で効率的な理学療法介入を検討する必要があると考えられる。また,入院15日目を従属変数のカットオフ値にした場合,呼吸器系疾患症例,入院時のトイレ動作に対する介助,入院時の移乗動作に対する介助が退院遅延に影響する因子であることが示された。これらの因子は理学療法で改善しうるため,理学療法介入のために有用な情報となる可能性があると考えられる。

一方,本研究は疾患に伴った治療経過を考慮できておらず,傷病群別に在院日数のカットオフ値を設定し,退院遅延因子を検討していく必要がある。