第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本予防理学療法学会 一般演題ポスター
予防P06

Fri. May 27, 2016 3:20 PM - 4:20 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-YB-06-5] リハビリテーション従事者における痛みの調査

痛みの精神・認知要素と職業性ストレスの関係

坂本祐太, 甘利貴志, 堀内俊樹, 渡邉浩文 (笛吹中央病院リハビリテーション科)

Keywords:痛み, 職業性ストレス, 勤労者医療

【はじめに,目的】

本邦における痛みの疫学調査では,全人口の約15%が痛みを6か月以上継続しているといわれる。社会的にも痛みへの対応が求められているが,痛みは感覚,情動や認知といった多面性を有し,多角的な評価が必要とされる。また,厚生労働省は平成27年12月より労働者へのストレスチェック制度を義務化する。この制度は労働者のメンタルヘルス不調のリスクを未然に防止する取り組みである。本研究の目的は,リハビリテーション業務を行う労働者を対象に,痛みの実態調査を行い,痛みの精神,認知的要素と,職業性ストレスの関係を明らかにすることである。


【方法】

対象は,リハビリテーション科の労働者のうち,同意が得られた38名(年齢29.2±5.4歳,男性21名,女性17名,勤続年数6.3±3.3年,PT19名,OT16名,ST2名,事務職1名)とした。痛みの評価は,部位,発症期間,痛みの量をVisual Analog Scale(以下,VAS),破局的思考をPain Catastrophizing Scale(以下,PCS),主観的生活障害度をPain Disability Assessment Scale(以下,PDAS),不安と抑うつをHospital Anxiety and Depression Scale(以下HADS)を用いた。職業性ストレスは,職業性ストレス簡易調査票(57項目)を用いた。有痛者の痛みの評価と職業性ストレスの「ストレスによっておこる心身の反応(以下,ストレス反応)」の関係を,spearmanの順位相関係数で検討した。統計解析はEZRを使用し,有意水準5%未満とした。


【結果】

有痛者は25名で全体の65.8%となった。痛み部位は複数保有する部位も換算し,腰部11名,頸部5名,肩部3名,鼠径部3名,その他11名となった。痛みの期間は245.3±353.0週で,19名(有痛者の76%)が3か月以上痛みを保持していた。痛みの評価はVAS 38±23.6mm,PCS 17.3±9.0,PDAS 6.3±4.4,不安7.7±3.2,抑うつ8.0±3.4となった。ストレス反応は,活気6.12±1.9,イライラ感6.8±2.1,疲労感8±1.7不安感6.1±2.1,抑うつ感11.4±3.2,身体愁訴22±4.1となった。ストレス反応の不安感または抑うつ感と相関関係で統計学的有意差を得たのは,PCSと不安感rs=0.56(p<.005),不安と不安感rs=0.82(p<.000),不安と抑うつ感rs=0.46(p<.05),抑うつと不安感rs=0.81(p<.000),抑うつと抑うつ感rs=0.75(p<.000)となった。


【結論】

対象は勤続年数平均6.3年と若手の労働者が中心だったが,有痛者の割合が高く,慢性化している傾向がみられた。慢性痛では精神,認知的要素が複雑に絡み合い慢性化するとされる。また,ストレス反応の不安感と抑うつ感は高ストレスでみられるといわれる。今回の結果では,PCSと不安,抑うつが,ストレス反応の不安感または抑うつ感と中等度以上の正の相関関係にあった。職業性ストレスは,痛みの精神,認知的要素と影響しあうことが示唆された。