第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本予防理学療法学会 一般演題ポスター
予防P08

2016年5月28日(土) 10:30 〜 11:30 第10会場 (産業振興センター 2階 セミナールームB)

[P-YB-08-2] 低栄養入院患者のNSTによる早期栄養サポートと理学療法介入の効果について

脇野昌司1, 藤田修平1, 田端洋貴1, 西野仁1, 長谷充月季1, 植山綾子1, 橋本翔太1, 藤本美香2, 辻本晴俊3 (1.近畿大学医学部堺病院リハビリテーション部, 2.近畿大学医学部堺病院内分泌・代謝・糖尿病内科, 3.近畿大学医学部堺病院リハビリテーション科)

キーワード:早期栄養サポート, 低栄養, 理学療法

【はじめに,目的】

当院では,Nutrition support team(NST)に理学療法士も参加しており,低栄養患者に対する理学療法介入には,栄養サポートとの併用が有効であると報告してきた。そこで今回は,入院後に早期からNST介入する事で,運動機能,栄養状態,転帰について後方視的に検討し,知見を得たので報告する。NST介入を入院後2週未満に行った早期群(R群)と2週以上経過後に行ったコントロール群(C群)での2ヵ月間の経過と転帰について調査した。

【方法】

対象は,当院入院患者で低栄養を有し,NSTと理学療法を併用した患者45名のうち2ヵ月間の経過観察が可能であった25名で,R群14名(年齢76.5歳,NST介入開始まで9.3日,運動器12例,呼吸器2例)と,C群11名(年齢75歳,NST介入開始まで30.3日,運動器7例,呼吸器2例,脳血管2例)に分けて調査した。なお,理学療法介入時期は両群共に差を認めなかった。評価項目は,FIM-m,Alb,CRP,BMI,エネルギー摂取率(%TEE:%Total energy expenditure),理学療法実施時のエネルギー消費量,転帰とし,理学療法開始時,1ヵ月後,2ヵ月後の経時的変化について調査した。統計学的分析には,SPSSを用いて多重比較検定(Tukey-Kramer検定)を用いた。また,転帰についてはχ2乗検定を用いた。理学療法は,低負荷での基本動作練習を中心に実施した。

【結果】

FIM-mは,R群開始時39.9点,1ヵ月後53.1点,2ヵ月後63.2点,C群開始時33.4点,1ヵ月後40.5点,2ヵ月後48.5点であり,2ヵ月後にのみ2群間で有意差を認めた(p<0.05)。Albは,R群開始時2.42g/dl,1ヵ月後2.70g/dl,2ヵ月後2.99g/dl,C群開始時2.61g/dl,1ヵ月後2.90g/dl,2ヵ月後3.08g/dl,CRPは,R群開始時2.65mg/dl,1ヵ月後1.15mg/dl,2ヵ月後0.92mg/dl,C群開始時2.05mg/dl,1ヵ月後1.30mg/dl,2ヵ月後0.88mg/dl,BMIは,R群開始時20.7kg/m2,1ヵ月後20.6 kg/m2,2ヵ月後20.4 kg/m2,C群開始時19.7 kg/m2,1ヵ月後19.1 kg/m2,2ヵ月後19.4 kg/m2,%TEEは,R群開始時70.1%,1ヵ月後86.8%,2ヵ月後101.0%で,C群は開始時72.1%,1ヵ月後85.1%,2ヵ月後95.3%となり,Alb,CRP,BMI,%TEEは全ての期間で2群間に差を認めなかった。エネルギー消費量は,R群開始時56.5kcal,1ヵ月後78.0kcal,2ヵ月後88.2kcalで,C群開始時47.6kcal,1ヵ月後68.4kcal,2ヵ月後72.8kcalとなり,2ヵ月後のみ2群間で差を認めた(p<0.05)。転帰については,R群自宅退院10例,転院4例,C群自宅退院3例,転院8例となり,R群で退院率が高い傾向を示した(p<0.05)。

【結論】

入院後2週未満からの早期NST+理学療法介入は,2週以降に介入したC群に比べ,FIM-m,エネルギー消費量で2ヵ月後に有意に向上した。本研究は少数例での調査であるが,自宅退院率が早期群で高い傾向を示した。Alb,BMIから中等度以上の高齢低栄養患者は,入院前から全身状態悪化,食思不振,運動機能低下傾向であり,適切な栄養評価に基づいた早期栄養サポートと理学療法介入が重要であると示唆された。