[P-YB-08-3] 大腿骨近位部骨折患者に対するNSTと連携した介入が歩行能力に及ぼす影響
Keywords:大腿骨近位部骨折, 栄養, 歩行
【はじめに,目的】
近年,栄養状態に起因するサルコペニアが注目され,栄養状態と移動能力の関連性に対する関心が高まっている。我々は過去3年間に骨関節疾患により当院に入院し理学療法を行った患者の約7割に栄養障害を認めたこと,栄養状態と歩行能力の再獲得に要する期間に関連を認めたことを確認した。このことは,適切な栄養サポートを行うことで,移動能力の回復が促進される可能性を示唆していると考えられた。そこで本研究では,栄養サポートチーム(Nutrition Support Team:以下,NST)と連携した介入が,歩行能力再獲得までの期間に影響を及ぼすのか,そしてその関連要因を検討することを目的とした。
【方法】
対象は,大腿骨近位部骨折により入院し術後理学療法を実施した患者で,NSTによる栄養サポート実施患者22名(2014年10月~2015年9月入院)を介入群,NSTによる栄養サポート非実施患者8名(2011年5月~2012年5月入院)を対照群とした。中枢神経疾患による歩行障害を有する者,神経筋疾患・糖尿病を有する者は除外した。介入群に対し,NSTにて理学療法の進捗状況や活動量及び栄養状態に応じ,食事摂取の内容や方法の検討を行った。調査は,年齢・性別及び疾患に関する一般情報,認知機能(Mini Mental State Examination:以下,MMSE),栄養指標(Controlling Nutritional Status:以下,CONUT),1日平均リハビリテーション実施単位数(以下,平均実施単位数)の情報を収集した。術後から10m歩行が自力で可能となるまでに要した日数(以下,歩行可能日数)の違いを,Mann-WhitneyのU検定を用いて2群間で比較した。介入群は,術後1週毎に生体電気インピーダンス法(インボディ社製InBody S10)で四肢骨格筋量を計測し,骨格筋指標(Skeletal Muscle mass Index:以下,SMI)を算出した。歩行可能日数とSMIとの関連性を,Pearsonの積率相関係数を用いた相関分析により検討した。統計処理はIBM SPSS statistics 21を使用し有意水準は5%とした。
【結果】
介入群と対照群の2群間で,年齢,入院時のMMSE得点及びCONUT値,平均実施単位数に有意差は認めなかったものの,歩行可能日数は,対照群に比べ介入群は有意に短かった(介入群16.0±10.7日,対照群32.0±24.1日,p=0.019)。相関分析の結果,歩行可能日数と術後1週目のSMI値に有意な負の相関を認めた(r=-0.540,p=0.031)。
【結論】
大腿骨近位部骨折術後患者の早期歩行の獲得には,栄養サポートと共に運動療法を行うことが重要である可能性が示唆された。また歩行可能日数と術後1週目の四肢骨格筋量の関連性が示唆されたことより,術後の骨格筋量の低下を防ぐことは,早期歩行獲得の一助となるのではないかと考えられた。今後は術前から骨格筋量を経時的に評価し,周術期における栄養サポート開始時期の検討が必要である。
近年,栄養状態に起因するサルコペニアが注目され,栄養状態と移動能力の関連性に対する関心が高まっている。我々は過去3年間に骨関節疾患により当院に入院し理学療法を行った患者の約7割に栄養障害を認めたこと,栄養状態と歩行能力の再獲得に要する期間に関連を認めたことを確認した。このことは,適切な栄養サポートを行うことで,移動能力の回復が促進される可能性を示唆していると考えられた。そこで本研究では,栄養サポートチーム(Nutrition Support Team:以下,NST)と連携した介入が,歩行能力再獲得までの期間に影響を及ぼすのか,そしてその関連要因を検討することを目的とした。
【方法】
対象は,大腿骨近位部骨折により入院し術後理学療法を実施した患者で,NSTによる栄養サポート実施患者22名(2014年10月~2015年9月入院)を介入群,NSTによる栄養サポート非実施患者8名(2011年5月~2012年5月入院)を対照群とした。中枢神経疾患による歩行障害を有する者,神経筋疾患・糖尿病を有する者は除外した。介入群に対し,NSTにて理学療法の進捗状況や活動量及び栄養状態に応じ,食事摂取の内容や方法の検討を行った。調査は,年齢・性別及び疾患に関する一般情報,認知機能(Mini Mental State Examination:以下,MMSE),栄養指標(Controlling Nutritional Status:以下,CONUT),1日平均リハビリテーション実施単位数(以下,平均実施単位数)の情報を収集した。術後から10m歩行が自力で可能となるまでに要した日数(以下,歩行可能日数)の違いを,Mann-WhitneyのU検定を用いて2群間で比較した。介入群は,術後1週毎に生体電気インピーダンス法(インボディ社製InBody S10)で四肢骨格筋量を計測し,骨格筋指標(Skeletal Muscle mass Index:以下,SMI)を算出した。歩行可能日数とSMIとの関連性を,Pearsonの積率相関係数を用いた相関分析により検討した。統計処理はIBM SPSS statistics 21を使用し有意水準は5%とした。
【結果】
介入群と対照群の2群間で,年齢,入院時のMMSE得点及びCONUT値,平均実施単位数に有意差は認めなかったものの,歩行可能日数は,対照群に比べ介入群は有意に短かった(介入群16.0±10.7日,対照群32.0±24.1日,p=0.019)。相関分析の結果,歩行可能日数と術後1週目のSMI値に有意な負の相関を認めた(r=-0.540,p=0.031)。
【結論】
大腿骨近位部骨折術後患者の早期歩行の獲得には,栄養サポートと共に運動療法を行うことが重要である可能性が示唆された。また歩行可能日数と術後1週目の四肢骨格筋量の関連性が示唆されたことより,術後の骨格筋量の低下を防ぐことは,早期歩行獲得の一助となるのではないかと考えられた。今後は術前から骨格筋量を経時的に評価し,周術期における栄養サポート開始時期の検討が必要である。