[P-YB-08-4] 当院における外来血液透析患者の運動機能に関する調査報告
~原疾患別による比較~
Keywords:血液透析, 運動機能, 糖尿病
【はじめに,目的】
血液透析(hemodialysis以下,HD)を受けている患者の運動機能は,循環器系や代謝・免疫系の異常や腎性貧血,身体活動量の低下傾向などにより著明に低下していることが報告されている。HD導入の原疾患第1位は糖尿病性腎症であり,2013年の本邦におけるHD導入患者の43.8%を占めていたことが報告されている。今回の研究の目的は,HD患者の運動機能について,糖尿病性腎症により末期腎不全に至った患者とそれ以外の患者を比較することである。
【方法】
対象は,当院でHD治療を受けている末期腎不全患者39名(男性23名,女性16名,平均年齢は68.7±10.3歳)とした。対象者を糖尿病性腎症により末期腎不全に至った患者(DM群)とそれ以外の患者(非DM群)に群分けし,比較を行った。DM群は17名(男性12名,女性5名,平均年齢69.0歳±7.0歳),非DM群は22名(男性11名,女性11名,平均年齢68.0歳±12.1歳)であった。
運動機能として,敏捷性,筋力,柔軟性,バランス機能,歩行能力を評価した。敏捷性については,棒反応時間の測定,座位ステッピングテストを実施した。筋力については,握力,膝伸展筋力を測定した。膝伸展筋力については,測定値を体重で除した値を算出した。柔軟性については,長坐位体前屈テストを実施した。バランス機能については,片脚立位保持時間,Functional reach test(以下,FRT)を実施した。歩行能力については,独歩での10m最速歩行時間,Timed Up & Go test(以下,TUG)を測定した。握力,膝伸展筋力,片脚立位保持時間については,左右の平均値を算出し,データとして採用した。
DM群と非DM群との間で,それぞれの測定項目について,t検定を用いて比較を行った。危険率5%未満を有意水準とした。
【結果】
DM群と非DM群の比較において,棒反応時間,座位ステッピングテスト,握力,膝伸展筋力,長坐位体前屈テスト,FRT,10m最速歩行時間,TUGについては両群間で有意な差はみられなかった。片脚立位保持時間については,DM群3.8±3.5秒,非DM群13.0±14.4秒であり,DM群の方が有意(P<0.05)に短くなっていた。
【結論】
今回の研究結果より,HD患者のうち,糖尿病性腎症でHDに至った患者でバランス機能の低下が大きく,静的バランス機能の指標となる片脚立位保持でそれが顕著なことが示された。また,敏捷性,筋力,柔軟性,歩行能力については,糖尿病の合併は影響しないことが示された。糖尿病性腎症患者でバランス機能の低下がみられた原因については,糖尿病に合併することの多い末梢神経障害の影響が推察された。糖尿病性腎症からHDに至った患者においては,バランス機能に着目したアプローチが必要になると考えられた。
血液透析(hemodialysis以下,HD)を受けている患者の運動機能は,循環器系や代謝・免疫系の異常や腎性貧血,身体活動量の低下傾向などにより著明に低下していることが報告されている。HD導入の原疾患第1位は糖尿病性腎症であり,2013年の本邦におけるHD導入患者の43.8%を占めていたことが報告されている。今回の研究の目的は,HD患者の運動機能について,糖尿病性腎症により末期腎不全に至った患者とそれ以外の患者を比較することである。
【方法】
対象は,当院でHD治療を受けている末期腎不全患者39名(男性23名,女性16名,平均年齢は68.7±10.3歳)とした。対象者を糖尿病性腎症により末期腎不全に至った患者(DM群)とそれ以外の患者(非DM群)に群分けし,比較を行った。DM群は17名(男性12名,女性5名,平均年齢69.0歳±7.0歳),非DM群は22名(男性11名,女性11名,平均年齢68.0歳±12.1歳)であった。
運動機能として,敏捷性,筋力,柔軟性,バランス機能,歩行能力を評価した。敏捷性については,棒反応時間の測定,座位ステッピングテストを実施した。筋力については,握力,膝伸展筋力を測定した。膝伸展筋力については,測定値を体重で除した値を算出した。柔軟性については,長坐位体前屈テストを実施した。バランス機能については,片脚立位保持時間,Functional reach test(以下,FRT)を実施した。歩行能力については,独歩での10m最速歩行時間,Timed Up & Go test(以下,TUG)を測定した。握力,膝伸展筋力,片脚立位保持時間については,左右の平均値を算出し,データとして採用した。
DM群と非DM群との間で,それぞれの測定項目について,t検定を用いて比較を行った。危険率5%未満を有意水準とした。
【結果】
DM群と非DM群の比較において,棒反応時間,座位ステッピングテスト,握力,膝伸展筋力,長坐位体前屈テスト,FRT,10m最速歩行時間,TUGについては両群間で有意な差はみられなかった。片脚立位保持時間については,DM群3.8±3.5秒,非DM群13.0±14.4秒であり,DM群の方が有意(P<0.05)に短くなっていた。
【結論】
今回の研究結果より,HD患者のうち,糖尿病性腎症でHDに至った患者でバランス機能の低下が大きく,静的バランス機能の指標となる片脚立位保持でそれが顕著なことが示された。また,敏捷性,筋力,柔軟性,歩行能力については,糖尿病の合併は影響しないことが示された。糖尿病性腎症患者でバランス機能の低下がみられた原因については,糖尿病に合併することの多い末梢神経障害の影響が推察された。糖尿病性腎症からHDに至った患者においては,バランス機能に着目したアプローチが必要になると考えられた。