第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本予防理学療法学会 一般演題ポスター
予防P08

Sat. May 28, 2016 10:30 AM - 11:30 AM 第10会場 (産業振興センター 2階 セミナールームB)

[P-YB-08-5] 外来維持血液透析患者への透析中運動療法導入の影響

―低強度レジスタンストレーニングによる介入―

市ノ瀬有佐1, 山田耕平1, 横山茂樹2, 安岐桂子1, 玉木久美子1, 出来賢二1, 木曽靖彦1, 表原和明1, 塩田和輝1, 多田明子1, 岡野宏信1, 山﨑康司3, 本田透4, 小野恭裕4 (1.香川県立中央病院リハビリテーション部, 2.京都橘大学健康科学部理学療法学科, 3.香川県立中央病院腎臓・膠原病内科, 4.香川県立中央病院リハビリテーション科)

Keywords:外来維持血液透析, 透析中運動療法, フレイル

【はじめに,目的】

透析患者の身体機能は,栄養障害,炎症,尿毒症,多様な疾病の併存および身体不活動などさまざまな原因によって著しく低下している(忽那ら,2015)と言われている。また多くの透析患者にフレイルを認めることが問題視されている(加藤ら,2014)。
一方,HD患者に対する運動療法の介入効果として,有酸素運動により運動耐容能,透析効率の改善にも有効であることが示されている。しかしレジスタンストレーニング(RT)に関する報告は少なく,身体機能および精神機能の改善効果については一致した見解が得られていない。
そこで,外来維持HD患者において,HD中の運動療法として低強度RTを導入し,フレイルの有無が身体機能,精神機能へ与える影響を検討することを目的とした。

【方法】

対象は,当院においてHD中運動療法を導入した2014年11月以降に外来維持HDを受けている者で,6ヵ月間の運動継続が可能であった14例(男性10例,女性4例,平均年齢68.9±13.0歳,平均HD期間5.3±7.0年)である。運動療法導入前にフレイルの指標となる基本チェックリストによる点数が,7点以下を非フレイル群(6例),8点以上をフレイル群(8例)とし2群に割付した。
運動療法はHD開始後2時間以内に実施し,主観的運動強度(RPE)を指標としたセラバンドやトレーニングボールによる低強度RTを中心として下肢に対するプログラムを20分間実施した。
患者特性として,性別,年齢,Body Mass Index(BMI),透析導入原疾患,透析導入期間をカルテより調査した。評価項目は,標準化透析量(Kt/V),%クレアチニン産生速度(%CGR),等尺性膝伸展筋力体重比(WBI),開眼片脚立位時間,Timed Up & Go Test(TUG),6分間歩行距離(6MWD),Hospital Anxiety and Depression Scale(HADS)とした。評価時期は,運動療法導入前および導入後1・3・6ヵ月とした。
統計解析は,各評価項目において,フレイルの有無と測定時期の2要因とした分散分析および多重比較を用いて検討した。統計にはSPSS(ver22)を用い,有意水準は5%とした。

【結果】

WBIでは,3・6ヶ月にフレイル群が非フレイル群より有意に低値を示した。一方,6MWDでは導入前および1ヶ月にフレイル群が非フレイル群より有意に低値を示していた。
%CGRでは導入前はフレイル群と非フレイル群に差はなかったが,1ヶ月後からフレイル群が非フレイル群より低値を示していた。
HADSでは,3ヶ月時のみにフレイル群が非フレイル群より有意に低値を示した。
開眼片脚立位時間,TUG,Kt/Vには,著変はみられなかった。

【結論】

下肢筋力では3ヶ月以降にフレイル群が非フレイル群よりも低値を示しており,非フレイル群の方が下肢に対する運動の効果は出現しやすい傾向にあった。一方,6MWDは導入前から6ヶ月までを通してフレイル群が低い傾向にあることから,運動耐容能の向上を目指したプログラム導入も検討する余地がある。