[P-YB-09-1] 地域在住高齢者の身体機能低下を判別するための簡便なスクリーニング方法の開発
「走れるかどうか」の単一質問指標を用いた検討
キーワード:介護予防, 走行, 質問指標
【はじめに,目的】
今後,後期高齢者の伸び率が急増することから,要介護状態に陥らないために介護予防が必要である。地域在住高齢者の要介護リスクや運動機能低下の早期発見のために,現在様々な指標が用いられているが,より簡便なスクリーニング方法が求められる。
走行は高い運動機能を必要とする動作である。したがって,その可否は比較的身体機能の維持されている地域在住高齢者を対象とした身体機能低下の予測に有用であることが考えられる。しかし,日常生活での「走れるかどうか」を評価し,その妥当性を検討した報告は見あたらない。そこで本研究では,「走れるかどうか」の単一質問指標による簡便なスクリーニング方法と,要介護リスクや運動機能との関連を調べることを目的とした。
【方法】
地域在住高齢者104名を対象とし,「走れるかどうか(小走りを含む)」の質問紙による評価を行い,「走れる」と答えた群を走れる群,「走れない」と答えた群を走れない群とした。同じく質問紙を用いて,介護予防チェックリスト,服用している薬剤の種類数,関節痛の数を評価した。介護予防チェックリストは,閉じこもり,転倒,低栄養の3つの構成概念から成る15項目の質問紙であり,合計15点で得点が高いほど要介護リスクが高いことを示す。また運動機能として,握力(kg),最大等尺性膝関節伸展筋力(Nm/kg),最大歩行速度(m/sec,秒),5 Chair Stand(5CS,秒),Time up and Go(TUG,秒)を測定した。2群間の比較は,各測定項目においてカイ二乗検定,対応のないt検定を用いて検討を行った。統計学的有意水準は5%未満とした。
【結果】
「走れるかどうか」による群分けの結果,走れる群84名(平均年齢70.4±7.6歳,男性31名,女性53名),走れない群20名(79.0±6.6歳,男性7名,女性13名)であり,年齢は走れない群で有意に高かったが(p<0.01),男女比に群間の差はなかった。介護予防チェックリストは走れる群(1.0±1.2点)と比べ走れない群(2.2±1.8点)で有意に高かったが(p<0.05),服薬の種類と関節痛の数には有意差がなかった。運動機能においては,走れる群vs走れない群の握力は25.5±7.1kg vs 21.0±4.9kg,膝伸展筋力は1.5±0.4Nm/kg vs 1.0±0.4Nm/kg,歩行速度は1.9±0.3m/sec vs 1.5±0.3m/secであり走れない群で有意に低く(p<0.01),5CSは7.8±2.1秒vs 8.3±3.3秒,TUGは5.5±1.0 vs 8.3±2.3秒であり,走れない群で有意に延長していた(p<0.01)。
【結論】
本研究の結果,走れるかどうかの質問指標は,介護予防チェックリストおよび運動機能との関連を認めた。
今後は二次予防,三次予防のみならず,虚弱に陥らないように比較的早期から行う一次予防が益々重要となってくる。本研究で用いた「走れるかどうか」の単一質問指標は,地域在住で比較的体力の高い高齢者の身体機能低下を簡便にスクリーニングする良い指標となるのではないかと考えられる。
今後,後期高齢者の伸び率が急増することから,要介護状態に陥らないために介護予防が必要である。地域在住高齢者の要介護リスクや運動機能低下の早期発見のために,現在様々な指標が用いられているが,より簡便なスクリーニング方法が求められる。
走行は高い運動機能を必要とする動作である。したがって,その可否は比較的身体機能の維持されている地域在住高齢者を対象とした身体機能低下の予測に有用であることが考えられる。しかし,日常生活での「走れるかどうか」を評価し,その妥当性を検討した報告は見あたらない。そこで本研究では,「走れるかどうか」の単一質問指標による簡便なスクリーニング方法と,要介護リスクや運動機能との関連を調べることを目的とした。
【方法】
地域在住高齢者104名を対象とし,「走れるかどうか(小走りを含む)」の質問紙による評価を行い,「走れる」と答えた群を走れる群,「走れない」と答えた群を走れない群とした。同じく質問紙を用いて,介護予防チェックリスト,服用している薬剤の種類数,関節痛の数を評価した。介護予防チェックリストは,閉じこもり,転倒,低栄養の3つの構成概念から成る15項目の質問紙であり,合計15点で得点が高いほど要介護リスクが高いことを示す。また運動機能として,握力(kg),最大等尺性膝関節伸展筋力(Nm/kg),最大歩行速度(m/sec,秒),5 Chair Stand(5CS,秒),Time up and Go(TUG,秒)を測定した。2群間の比較は,各測定項目においてカイ二乗検定,対応のないt検定を用いて検討を行った。統計学的有意水準は5%未満とした。
【結果】
「走れるかどうか」による群分けの結果,走れる群84名(平均年齢70.4±7.6歳,男性31名,女性53名),走れない群20名(79.0±6.6歳,男性7名,女性13名)であり,年齢は走れない群で有意に高かったが(p<0.01),男女比に群間の差はなかった。介護予防チェックリストは走れる群(1.0±1.2点)と比べ走れない群(2.2±1.8点)で有意に高かったが(p<0.05),服薬の種類と関節痛の数には有意差がなかった。運動機能においては,走れる群vs走れない群の握力は25.5±7.1kg vs 21.0±4.9kg,膝伸展筋力は1.5±0.4Nm/kg vs 1.0±0.4Nm/kg,歩行速度は1.9±0.3m/sec vs 1.5±0.3m/secであり走れない群で有意に低く(p<0.01),5CSは7.8±2.1秒vs 8.3±3.3秒,TUGは5.5±1.0 vs 8.3±2.3秒であり,走れない群で有意に延長していた(p<0.01)。
【結論】
本研究の結果,走れるかどうかの質問指標は,介護予防チェックリストおよび運動機能との関連を認めた。
今後は二次予防,三次予防のみならず,虚弱に陥らないように比較的早期から行う一次予防が益々重要となってくる。本研究で用いた「走れるかどうか」の単一質問指標は,地域在住で比較的体力の高い高齢者の身体機能低下を簡便にスクリーニングする良い指標となるのではないかと考えられる。