[P-YB-09-2] 地域在住高齢者における痛みとフレイルの関連
運動器慢性痛の部位数・痛みの強度からの検討
Keywords:フレイル, 痛み, 地域在住高齢者
【はじめに,目的】
フレイルとは,高齢期において生理的予備能が低下することでストレスに対する脆弱性が亢進して,不健康を引き起こしやすい状態であり,介護予防分野において介入ターゲットとして注目されている。一方で高齢者において運動器慢性痛を始め,痛みの有病率は高く,身体機能低下やその後の転倒リスクの上昇など様々な悪影響を与えることが示されている。しかし,痛みとフレイルの関連は未だ不明確である。本研究の目的は地域在住高齢者において痛みとフレイルの関連を詳細に調査することとした。
【方法】
対象者は独歩が可能な65歳以上の地域在住高齢者364名の内,欠損値がある者,Mini-Mental State Examination(MMSE)が18点未満の者,脳血管障害もしくはパーキンソン病がある者を除外した321名(平均年齢74.3±5.6歳,女性213名)とした。フレイルの基準は先行研究(Shimada H, et al., 2013)をもとにプレフレイルとフレイルを決定した。痛みは強度と部位数に分けて検討した。痛みの強度はBrief Pain Inventory(BPI)のサブスケールを用いて測定しBPIの値にて3分位(痛みなし・かすかな痛み/軽度の痛み/中強度以上の痛み)とした。部位数は頸部・腰部・肩・肘・手関節と手指・股・膝・足関節と足部において3ヶ月以上続く痛みの有無をそれぞれ聴取し,運動器慢性痛として痛みなし/単関節痛/多関節痛と3群分けした。その他に年齢・性別・教育歴・Body Mass Index・MMSE・変形性膝関節症の有無・脊椎疾患(脊柱管狭窄症・圧迫骨折・椎間板ヘルニア)の有無を聴取・測定した。統計解析は目的変数を非フレイル/プレフレイルもしくは非フレイル/フレイル,説明変数を痛みの強度もしくは痛みの部位数とした単変量ロジスティック回帰分析を行ったのちに,その他の測定項目を調整変数とした強制投入法による多変量ロジスティック回帰分析を行った。
【結果】
プレフレイル,フレイルの有症率はそれぞれ54.2%(174名),6.5%(21名)であった。プレフレイルと痛みの強度・痛みの部位数の関連については単変量・多変量ロジスティック回帰分析ともに有意な関連は認められなかった。フレイルと痛みの強度の関連については中強度以上の痛みを有する者は痛みなし・かすかな痛みを有する者と比べてフレイルの有症率が有意に高かった(crude:OR:4.18,95%CI:1.25-13.94,p<0.05;adjusted:OR:7.30,95%CI:1.35-39.45,p<0.05)。フレイルと痛みの部位数の関連については多関節痛を有する者は痛みなしの者と比べてフレイルの有症率が有意に高かった(crude:OR:6.39,95%CI:1.91-21.30,p<0.01;adjusted:OR:7.21,95%CI:1.48-35.13,p<0.05)。
【結論】
地域在住高齢者において痛みの強度が高い者もしくは多関節に運動器慢性痛を有する者はフレイルである可能性が高いことが示された。今後は縦断研究により,因果関係を検証していく必要がある。
フレイルとは,高齢期において生理的予備能が低下することでストレスに対する脆弱性が亢進して,不健康を引き起こしやすい状態であり,介護予防分野において介入ターゲットとして注目されている。一方で高齢者において運動器慢性痛を始め,痛みの有病率は高く,身体機能低下やその後の転倒リスクの上昇など様々な悪影響を与えることが示されている。しかし,痛みとフレイルの関連は未だ不明確である。本研究の目的は地域在住高齢者において痛みとフレイルの関連を詳細に調査することとした。
【方法】
対象者は独歩が可能な65歳以上の地域在住高齢者364名の内,欠損値がある者,Mini-Mental State Examination(MMSE)が18点未満の者,脳血管障害もしくはパーキンソン病がある者を除外した321名(平均年齢74.3±5.6歳,女性213名)とした。フレイルの基準は先行研究(Shimada H, et al., 2013)をもとにプレフレイルとフレイルを決定した。痛みは強度と部位数に分けて検討した。痛みの強度はBrief Pain Inventory(BPI)のサブスケールを用いて測定しBPIの値にて3分位(痛みなし・かすかな痛み/軽度の痛み/中強度以上の痛み)とした。部位数は頸部・腰部・肩・肘・手関節と手指・股・膝・足関節と足部において3ヶ月以上続く痛みの有無をそれぞれ聴取し,運動器慢性痛として痛みなし/単関節痛/多関節痛と3群分けした。その他に年齢・性別・教育歴・Body Mass Index・MMSE・変形性膝関節症の有無・脊椎疾患(脊柱管狭窄症・圧迫骨折・椎間板ヘルニア)の有無を聴取・測定した。統計解析は目的変数を非フレイル/プレフレイルもしくは非フレイル/フレイル,説明変数を痛みの強度もしくは痛みの部位数とした単変量ロジスティック回帰分析を行ったのちに,その他の測定項目を調整変数とした強制投入法による多変量ロジスティック回帰分析を行った。
【結果】
プレフレイル,フレイルの有症率はそれぞれ54.2%(174名),6.5%(21名)であった。プレフレイルと痛みの強度・痛みの部位数の関連については単変量・多変量ロジスティック回帰分析ともに有意な関連は認められなかった。フレイルと痛みの強度の関連については中強度以上の痛みを有する者は痛みなし・かすかな痛みを有する者と比べてフレイルの有症率が有意に高かった(crude:OR:4.18,95%CI:1.25-13.94,p<0.05;adjusted:OR:7.30,95%CI:1.35-39.45,p<0.05)。フレイルと痛みの部位数の関連については多関節痛を有する者は痛みなしの者と比べてフレイルの有症率が有意に高かった(crude:OR:6.39,95%CI:1.91-21.30,p<0.01;adjusted:OR:7.21,95%CI:1.48-35.13,p<0.05)。
【結論】
地域在住高齢者において痛みの強度が高い者もしくは多関節に運動器慢性痛を有する者はフレイルである可能性が高いことが示された。今後は縦断研究により,因果関係を検証していく必要がある。