[P-YB-09-3] CT大腰筋面積のサルコペニア診断基準値の検討
男性心大血管疾患患者の骨格筋量指標に着目して
Keywords:大腰筋面積, 骨格筋量指標, サルコペニア
【はじめに,目的】
近年サルコペニアの診断にCT画像による大腰筋面積を使用した報告が散見されるが,その診断基準は定められていない。一方Dual energy X-ray Absorptiometry(以下DXA)法やBioelectrical Impedance Analysis(以下BIA)法は骨格筋量指数(以下SMI)を用いた診断基準が定まっており,中でもAsian Working Group for Sarcopenia(以下AWGS)基準が使用されることが多い。CT画像により大腰筋面積を評価する利点として,腹部CTを撮影した患者であれば同時に大腰筋面積も評価でき,DXA法やBIA法が使用できない施設でも客観的に筋肉量を評価できることが挙げられる。そこで本研究ではCT画像による大腰筋面積とSMIを比較することによって,サルコペニア診断に有用な大腰筋面積のカットオフ値を検討することとした。
【方法】
対象は平成27年4月から10月までに心臓外科手術を施行するために待機的入院をした男性患者41例中,術前の心大血管の診断時に腹部までCT撮影し,且つ体組成計により四肢骨格筋量が測定できた27例(平均年齢70±13歳)とした。
大腰筋面積は,腹部CTの腸骨最頭側レベルの横断画像上で大腰筋断面を関心領域として設定し,左右の合計面積を算出した。四肢骨格筋量はBIA法であるタニタ社製マルチ周波数体組成計で測定し,下肢筋肉量およびSMIを求めた。SMIの男性サルコペニア診断基準はAWGSに従い7.0kg/m2とした。また身体機能として握力,通常歩行速度,CS-30および栄養指標としてAlb,Geriatric Nutritional Risk Index(以下GNRI)を測定した。尚,CS-30は医師の許可を得た22例のみ測定した。
大腰筋面積と各測定値および年齢,身長の相関関係はピアソンの積率相関係数またはスピアマンの順位相関係数を用いた。またSMIが7.0kg/m2未満となる大腰筋面積のカットオフ値はReceiver Operating Characteristic(ROC)曲線より求めた。統計処理はGraphPad Prism 5を使用し,有意水準は5%とした。
【結果】
各測定項目の平均値は,大腰筋面積:19.6±4.8cm2,下肢筋肉量:15.8±2.6kg,SMI:7.4±0.9 kg/m2,握力:34.0±6.1kg,通常歩行速度:1.3±0.3m/s,CS-30:16.2±5.6回,Alb:3.9±0.5g/dL,GNRI:102±11であった。SMIが7.0kg/m2未満となったのは8例であった。大腰筋面積と下肢筋肉量(r=0.75 p<0.001),SMI(r=0.77 p<0.001)は強い相関関係を認めた。その他の項目は年齢(r=-0.55 p<0.01),CS-30(ρ=0.46 p<0.05),GNRI(r=0.56 p<0.01)に中等度の相関関係を認めたが,身長,握力,通常歩行速度,Albは相関関係を認めなかった。
ROC曲線の結果,SMIが7.0 kg/m2未満となる大腰筋面積のカットオフ値は17.2cm2であった。このカットオフ値は曲線下面積0.763,感度79%,特異度75%であった(p<0.05)。
【結論】
大腰筋面積とSMIは強い相関関係を認め,SMI7.0 kg/m2未満となるカットオフ値として算出された17.2cm2は有用なサルコペニア診断基準となることが示唆された。
近年サルコペニアの診断にCT画像による大腰筋面積を使用した報告が散見されるが,その診断基準は定められていない。一方Dual energy X-ray Absorptiometry(以下DXA)法やBioelectrical Impedance Analysis(以下BIA)法は骨格筋量指数(以下SMI)を用いた診断基準が定まっており,中でもAsian Working Group for Sarcopenia(以下AWGS)基準が使用されることが多い。CT画像により大腰筋面積を評価する利点として,腹部CTを撮影した患者であれば同時に大腰筋面積も評価でき,DXA法やBIA法が使用できない施設でも客観的に筋肉量を評価できることが挙げられる。そこで本研究ではCT画像による大腰筋面積とSMIを比較することによって,サルコペニア診断に有用な大腰筋面積のカットオフ値を検討することとした。
【方法】
対象は平成27年4月から10月までに心臓外科手術を施行するために待機的入院をした男性患者41例中,術前の心大血管の診断時に腹部までCT撮影し,且つ体組成計により四肢骨格筋量が測定できた27例(平均年齢70±13歳)とした。
大腰筋面積は,腹部CTの腸骨最頭側レベルの横断画像上で大腰筋断面を関心領域として設定し,左右の合計面積を算出した。四肢骨格筋量はBIA法であるタニタ社製マルチ周波数体組成計で測定し,下肢筋肉量およびSMIを求めた。SMIの男性サルコペニア診断基準はAWGSに従い7.0kg/m2とした。また身体機能として握力,通常歩行速度,CS-30および栄養指標としてAlb,Geriatric Nutritional Risk Index(以下GNRI)を測定した。尚,CS-30は医師の許可を得た22例のみ測定した。
大腰筋面積と各測定値および年齢,身長の相関関係はピアソンの積率相関係数またはスピアマンの順位相関係数を用いた。またSMIが7.0kg/m2未満となる大腰筋面積のカットオフ値はReceiver Operating Characteristic(ROC)曲線より求めた。統計処理はGraphPad Prism 5を使用し,有意水準は5%とした。
【結果】
各測定項目の平均値は,大腰筋面積:19.6±4.8cm2,下肢筋肉量:15.8±2.6kg,SMI:7.4±0.9 kg/m2,握力:34.0±6.1kg,通常歩行速度:1.3±0.3m/s,CS-30:16.2±5.6回,Alb:3.9±0.5g/dL,GNRI:102±11であった。SMIが7.0kg/m2未満となったのは8例であった。大腰筋面積と下肢筋肉量(r=0.75 p<0.001),SMI(r=0.77 p<0.001)は強い相関関係を認めた。その他の項目は年齢(r=-0.55 p<0.01),CS-30(ρ=0.46 p<0.05),GNRI(r=0.56 p<0.01)に中等度の相関関係を認めたが,身長,握力,通常歩行速度,Albは相関関係を認めなかった。
ROC曲線の結果,SMIが7.0 kg/m2未満となる大腰筋面積のカットオフ値は17.2cm2であった。このカットオフ値は曲線下面積0.763,感度79%,特異度75%であった(p<0.05)。
【結論】
大腰筋面積とSMIは強い相関関係を認め,SMI7.0 kg/m2未満となるカットオフ値として算出された17.2cm2は有用なサルコペニア診断基準となることが示唆された。