第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本予防理学療法学会 一般演題ポスター
予防P10

2016年5月28日(土) 10:30 〜 11:30 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-YB-10-1] 健常高齢者の身体活動量,身体活動強度に関連する因子の検討

高橋亜紀穂1, 岩倉正浩2,3, 福井智子1, 堀水湧1, 大倉和貴2, 塩谷隆信3 (1.秋田大学医学部保健学科理学療法学専攻, 2.市立秋田総合病院リハビリテーション科, 3.秋田大学大学院医学系研究科保健学専攻理学療法講座)

キーワード:健常高齢者, 身体活動量, 運動強度

【はじめに,目的】

高齢者において身体活動(Physical activity;PA)の低下は,運動機能低下や,生活自立度低下,死亡率増加のリスク因子であり,PAを増加させることが,日常生活活動能力低下の予防や,健康寿命の延長につながる可能性が示唆されている。先行研究の多くはPAを,質問紙票を用いて評価しており,客観的に測定されたPAとの関連を検討した研究は少ない。また,PAは歩数といった量的側面だけでなく,運動強度の側面からも検討することが望ましいとされている。そこで,本研究の目的を,客観的に測定されたPAの量,強度のそれぞれに影響する因子を検討することとした。

【方法】

対象は,地域の公民館に通う健常高齢者33名(70.7±6.3歳)とした。評価項目はPA(歩数,運動強度が中等度以上の運動時間;Moderate-to-Vigorous PA(MV-PA)),身体組成(BMI),下肢筋力(5回起立-着座試験;5STST),運動耐容能(6分間歩行距離;6MWD),歩行機能(歩幅,歩行速度)とした。PA評価には,単軸加速度計のLifecorder GS4™(スズケン,東京)を用いた。評価期間は1週間とした。PAの評価では,身体活動量の指標として歩数を,身体活動強度の指標としてMV-PAを採用した。中等度以上の運動強度は,先行研究を参考に運動強度が3METs以上と定義した。歩行の評価では,歩行分析計(MG-M1110,東京)を用いて,10m歩行試験(快適歩行速度)中の歩幅,歩行速度を測定した。統計解析は,PAの量,強度に影響する因子を検討するために,歩数,MV-PAとその他の評価項目との関連を相関分析にて検討した。さらに,歩数,MV-PAを従属変数,その他の評価項目を独立変数としたStepwise法による重回帰分析を行った。有意水準は5%とした。解析にはSPSS version.22を用いた。

【結果】

対象者のPAの特性(平均±SD)は,歩数が7447.6±2930.3歩/日,MV-PAは18.6±12.6分/日であった。歩数と有意な相関を認めたのは,BMI(r=-.459,p=.007)と5STST(r=-.405,p=.019),OLST(r=.377,p=.030),6MWD(r=.569,p=.001)であった。MV-PAと有意な相関を認めたのは,BMI(r=-.406,p=.019)と6MWD(r=.497,p=.003),歩幅(r=.462,p=.007),歩行速度(r=.395,p=.023)であった。重回帰分析では,従属変数を歩数とした場合,独立変数としての6MWDが抽出された(f=14.867,p=.001,R2=.324)。従属変数をMV-PAとした場合,6MWDと歩幅が独立変数として抽出された(f=10.242,p=.000,R2=.406)。



【結論】

健常高齢者において歩数は,運動耐容能,身体組成,下肢筋力,バランスと関連し,特に運動耐容能と関連が強い可能性が示唆された。MV-PAは,運動耐容能,歩行機能,身体組成と関連し,特に運動耐容能,歩行機能と関連が強い可能性が示唆された。よって,PAの量と強度に関連する因子は異なる可能性が示唆された。