[P-YB-10-2] 地域在住後期高齢者における身体活動量の縦断調査と関連要因の検討
Keywords:後期高齢者, 身体活動量, 縦断調査
【はじめに,目的】
身体活動量は加齢により低下することが報告されている。しかし,75歳以上の後期高齢者を対象に身体活動量を調査した報告は少なく,その多くが横断研究である。本研究の目的は,縦断調査によって地域在住後期高齢者における身体活動量の経時的変化と関連要因を明らかにすることであった。
【方法】
対象は,2012年11月~2013年11月のベースライン調査に参加した地域在住高齢者411名のうち,2015年9月の追跡調査に参加した188名からデータ欠損などの理由により29名を除外した159名(平均年齢82.1±3.7歳)とした。
ベースライン調査と追跡調査時には,身体活動量(歩数,活動時間)の他,基本情報(年齢,性別等),身体機能指標(歩行速度,下肢筋力等),健康関連指標(ソーシャルサポート,運動習慣,主観的健康度等)の測定を行った。
身体活動量の測定には,生活習慣記録器(ライフコーダ,スズケン社製)を用い,一週間の身体活動量を記録した。また,記録されたデータから,一日あたりの歩数(以下歩数)と一日あたりの活動時間を算出した。更に,一日あたりの活動時間を3METs以上の中強度活動時間と,3METs未満の低強度活動時間に分類した。
統計解析は,身体活動量(歩数,中強度活動,低強度活動)の平均値をベースライン調査時と追跡調査時で比較した。また,ベースライン調査時と追跡調査時の身体活動量の変化により対象者を2群(低下群/維持向上群)に分類し,ベースライン調査時の各測定項目を比較した。さらに,身体活動量の変化(低下群/維持向上群)を従属変数とし,群間比較によってp<0.25であった項目を独立変数として多重ロジスティック回帰分析を実施した。
統計解析にはIBM SPSS Statistics 22.0を使用し,有意水準は5%とした。
【結果】
ベースライン調査時と比較して追跡調査時の低強度活動が有意に低下した(p<0.05)。身体活動量の変化について,低下群は84名,維持向上群は75名であった。2群間で各測定項目を比較した結果,ソーシャルサポートのみに有意な差が認められた(p<0.05)。また,多重ロジスティック回帰分析では,性別(p<0.01,OR:0.311),ソーシャルサポート(p<0.05,OR:1.435),および主観的健康度(p<0.05,OR:1.946)が,身体活動量の変化に関連する有意な独立変数として抽出された。
【結論】
低強度活動時間は3METs未満の運動強度を示す指標とされ,歩行以下の日常生活の活動時間を反映していると報告されている。結果より,後期高齢者では歩数や中強度の活動時間ではなく,低強度の活動時間が減少することが示された。また,調査期間に低強度の活動時間が低下した要因としては,ベースライン調査時における周囲環境のサポートや心理的な健康感が影響を与えていることが示唆された。後期高齢者の周囲環境のサポートの充足や心理的な健康感の向上が,日常生活の活動時間を維持するために重要な役割を担う可能性があると考えられる。
身体活動量は加齢により低下することが報告されている。しかし,75歳以上の後期高齢者を対象に身体活動量を調査した報告は少なく,その多くが横断研究である。本研究の目的は,縦断調査によって地域在住後期高齢者における身体活動量の経時的変化と関連要因を明らかにすることであった。
【方法】
対象は,2012年11月~2013年11月のベースライン調査に参加した地域在住高齢者411名のうち,2015年9月の追跡調査に参加した188名からデータ欠損などの理由により29名を除外した159名(平均年齢82.1±3.7歳)とした。
ベースライン調査と追跡調査時には,身体活動量(歩数,活動時間)の他,基本情報(年齢,性別等),身体機能指標(歩行速度,下肢筋力等),健康関連指標(ソーシャルサポート,運動習慣,主観的健康度等)の測定を行った。
身体活動量の測定には,生活習慣記録器(ライフコーダ,スズケン社製)を用い,一週間の身体活動量を記録した。また,記録されたデータから,一日あたりの歩数(以下歩数)と一日あたりの活動時間を算出した。更に,一日あたりの活動時間を3METs以上の中強度活動時間と,3METs未満の低強度活動時間に分類した。
統計解析は,身体活動量(歩数,中強度活動,低強度活動)の平均値をベースライン調査時と追跡調査時で比較した。また,ベースライン調査時と追跡調査時の身体活動量の変化により対象者を2群(低下群/維持向上群)に分類し,ベースライン調査時の各測定項目を比較した。さらに,身体活動量の変化(低下群/維持向上群)を従属変数とし,群間比較によってp<0.25であった項目を独立変数として多重ロジスティック回帰分析を実施した。
統計解析にはIBM SPSS Statistics 22.0を使用し,有意水準は5%とした。
【結果】
ベースライン調査時と比較して追跡調査時の低強度活動が有意に低下した(p<0.05)。身体活動量の変化について,低下群は84名,維持向上群は75名であった。2群間で各測定項目を比較した結果,ソーシャルサポートのみに有意な差が認められた(p<0.05)。また,多重ロジスティック回帰分析では,性別(p<0.01,OR:0.311),ソーシャルサポート(p<0.05,OR:1.435),および主観的健康度(p<0.05,OR:1.946)が,身体活動量の変化に関連する有意な独立変数として抽出された。
【結論】
低強度活動時間は3METs未満の運動強度を示す指標とされ,歩行以下の日常生活の活動時間を反映していると報告されている。結果より,後期高齢者では歩数や中強度の活動時間ではなく,低強度の活動時間が減少することが示された。また,調査期間に低強度の活動時間が低下した要因としては,ベースライン調査時における周囲環境のサポートや心理的な健康感が影響を与えていることが示唆された。後期高齢者の周囲環境のサポートの充足や心理的な健康感の向上が,日常生活の活動時間を維持するために重要な役割を担う可能性があると考えられる。