[P-YB-10-5] 地域在住中高年者におけるロコモ度テストの各テスト単独該当群の特徴
Keywords:ロコモティブシンドローム, 運動機能, 地域在住中高年者
【はじめに,目的】
運動器の障害による移動機能低下は,ロコモティブシンドローム(以下,ロコモ)と呼ばれている。ロコモの判定には,立ち上がりテスト,2ステップテスト,ロコモ25からなるロコモ度テストが用いられている。2015年5月に日本整形外科学会は,ロコモを判定する指標としてロコモ度テストの臨床判断値を策定し,3テストのいずれか一つが該当するとロコモとした。通常は,いずれか一つのテストが該当するところから徐々に進行すると考えられ,どのテストが最初に該当するかでそれぞれ運動器の脆弱化パターンが異なることが考えられる。本研究の目的は,地域在住中高年者を対象として,ロコモ度テストの各単独該当群を非該当群と比較し,それぞれどのような運動機能種目が低下しているかを明らかにすることである。
【方法】
対象は,要支援・要介護および身体障害非該当の地域在住中高年者765名である。3つのロコモ度テストに加え,歩行速度(通常・最大),握力,開眼片脚立ち時間(以下OLS),Functional Reach Test(以下FRT),5回立ち上がりテスト(以下SS-5),膝伸展筋力,足趾把持力,Body Mass Index(以下BMI)を評価した。
ロコモ非該当群と各ロコモ度テストの単独該当群(立ち上がり該当群,2ステップ該当群,ロコモ25該当群)に分類し,ロコモ非該当群と各群をDunnett法にて比較した。さらに,ロコモ非該当群と各ロコモ度テスト該当群を目的変数,ロコモ非該当群と各群の比較において有意差を認めた運動機能評価種目を独立変数とし,性別,年齢,BMIにて調整した二項ロジスティック回帰分析を実施した。有意水準は5%とした。
【結果】
ロコモ非該当群と立ち上がり該当群の比較では,立ち上がり該当群において年齢が有意に高く,OLS,SS-5,最大歩行速度,膝伸展筋力,足趾把持力が有意に低下していた。2ステップ該当群との比較では年齢が有意に高く,握力,OLS,歩行速度(通常・最大),足趾把持力に低下が認められた。そして,ロコモ25該当群との比較では握力,歩行速度(通常・最大)が有意な低下を示した。二項ロジスティック回帰分析の結果では,立ち上がり該当群に関連する因子として年齢,OLS,膝伸展筋力,足趾把持力が認められた。さらに2ステップ該当群には年齢と最大歩行速度が選択され,ロコモ25該当群には握力と通常歩行速度が関連する項目として抽出された。
【結論】
ロコモ度テストはBMI以外の全ての項目と関連することが認められ,幅広い運動機能評価種目の低下を網羅できることが示唆されたが,各テストは異なる運動機能評価種目が低下していた。このことから,3つのロコモ度テストは異なる側面の移動機能低下を評価していることが示唆された。さらに,ロコモ度テストを用いることにより,どのような運動介入が適切かを判定できる可能性があると考えられた。
運動器の障害による移動機能低下は,ロコモティブシンドローム(以下,ロコモ)と呼ばれている。ロコモの判定には,立ち上がりテスト,2ステップテスト,ロコモ25からなるロコモ度テストが用いられている。2015年5月に日本整形外科学会は,ロコモを判定する指標としてロコモ度テストの臨床判断値を策定し,3テストのいずれか一つが該当するとロコモとした。通常は,いずれか一つのテストが該当するところから徐々に進行すると考えられ,どのテストが最初に該当するかでそれぞれ運動器の脆弱化パターンが異なることが考えられる。本研究の目的は,地域在住中高年者を対象として,ロコモ度テストの各単独該当群を非該当群と比較し,それぞれどのような運動機能種目が低下しているかを明らかにすることである。
【方法】
対象は,要支援・要介護および身体障害非該当の地域在住中高年者765名である。3つのロコモ度テストに加え,歩行速度(通常・最大),握力,開眼片脚立ち時間(以下OLS),Functional Reach Test(以下FRT),5回立ち上がりテスト(以下SS-5),膝伸展筋力,足趾把持力,Body Mass Index(以下BMI)を評価した。
ロコモ非該当群と各ロコモ度テストの単独該当群(立ち上がり該当群,2ステップ該当群,ロコモ25該当群)に分類し,ロコモ非該当群と各群をDunnett法にて比較した。さらに,ロコモ非該当群と各ロコモ度テスト該当群を目的変数,ロコモ非該当群と各群の比較において有意差を認めた運動機能評価種目を独立変数とし,性別,年齢,BMIにて調整した二項ロジスティック回帰分析を実施した。有意水準は5%とした。
【結果】
ロコモ非該当群と立ち上がり該当群の比較では,立ち上がり該当群において年齢が有意に高く,OLS,SS-5,最大歩行速度,膝伸展筋力,足趾把持力が有意に低下していた。2ステップ該当群との比較では年齢が有意に高く,握力,OLS,歩行速度(通常・最大),足趾把持力に低下が認められた。そして,ロコモ25該当群との比較では握力,歩行速度(通常・最大)が有意な低下を示した。二項ロジスティック回帰分析の結果では,立ち上がり該当群に関連する因子として年齢,OLS,膝伸展筋力,足趾把持力が認められた。さらに2ステップ該当群には年齢と最大歩行速度が選択され,ロコモ25該当群には握力と通常歩行速度が関連する項目として抽出された。
【結論】
ロコモ度テストはBMI以外の全ての項目と関連することが認められ,幅広い運動機能評価種目の低下を網羅できることが示唆されたが,各テストは異なる運動機能評価種目が低下していた。このことから,3つのロコモ度テストは異なる側面の移動機能低下を評価していることが示唆された。さらに,ロコモ度テストを用いることにより,どのような運動介入が適切かを判定できる可能性があると考えられた。