第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本予防理学療法学会 一般演題ポスター
予防P12

Sat. May 28, 2016 2:50 PM - 3:50 PM 第10会場 (産業振興センター 2階 セミナールームB)

[P-YB-12-4] 地域在住高齢者における包括的なヘルスリテラシーと健康関連Quality of Lifeの関連性の検討

大塚脩斗1, 坪井大和2, 村田峻輔2, 澤龍一2, 斎藤貴2, 中村凌2, 伊佐常紀2, 海老名葵2, 近藤有希2, 鳥澤幸太郎1, 福田章真1, 小野玲2 (1.神戸大学医学部保健学科, 2.神戸大学大学院保健学研究科地域保健学領域)

Keywords:ヘルスリテラシー, 健康関連QOL, 高齢者

【はじめに,目的】現代の高齢社会においては健康関連Quality of Life(以下,QOL)を向上させることが重要視されており,その向上には,医療に関する情報を扱い,自己決定を行うことが重要である。ヘルスリテラシー(Health Literacy,以下,HL)とは,健康を促進・維持するために,情報を入手・理解・活用するスキルであるため,健康関連QOLの向上において重要であると考えられる。しかし,HLと健康関連QOLとの関連性について,地域在住高齢者に着目した報告は少ない。また,HLは読み書きの基本的スキルである機能的HL,情報を入手,適用するスキルである伝達的HL,情報を批判的に分析し,活用するスキルである批判的HLの3つのタイプに分類されるが,これらを包括的に評価した研究は少ない。そこで本研究の目的を,地域在住高齢者において包括的に評価されたHLと健康関連QOLとの関連性について検討することとした。

【方法】本研究の解析対象は,65歳以上の地域在住高齢者284名において,欠損値あり,Mini-Mental State Examinationが23点以下の者を除いた248名(73.2±5.1歳,女性166名)とした。HLの評価には日本語の14-item Health Literacy Scale(以下,HLS-14)を用い,機能的HL,伝達的HL,批判的HLの各下位項目の得点を算出し,中央値により低値群と高値群に分けた。健康関連QOLの評価には12-Item Short Form Health Surveyを用い,Physical Component Score(以下,PCS),Mental Component Score(以下,MCS)を算出した。統計解析は,PCS,MCSとHLS-14の各下位項目の関連を検討するためにMann-Whitney U検定を用いた。重回帰分析では,従属変数をPCS,MCS,独立変数をHLS-14の各下位項目,交絡変数を年齢,性別,世帯収入,配偶者の有無,抑うつ(Geriatric Depression Scale),身体機能(Short Physical Performance Battery)としたモデルを作成した。なお,モデルは単変量解析でPCS,MCSと有意な関連を示したHLS-14の下位項目ごとに作成した。各統計指標は5%未満を有意とした。

【結果】Mann-Whitney U検定の結果,PCSは機能的HL(低値群vs. 高値群=47.5[0.6-65.3]vs. 52.3[17.9-65.3],中央値[最小-最大],p<0.01)と批判的HL(52.2[0.6-65.3]vs. 48.7[18.6-65.3],p<0.05),MCSは機能的HL(52.2[32.3-74.7]vs. 55.4[33.8-70.8],p<0.01)との間に有意な関連を示した。重回帰分析の結果,高い機能的HLは高いPCS,高いMCSと独立して有意に関連していた(PCS:標準β=0.18,p <0.01,MCS:標準β=0.12,p<0.05)。なお,PCSと批判的HLとの間においては有意な関連はみられなかった。

【結論】本研究では,地域在住高齢者の健康関連QOLと3つのタイプのHLの関連において,機能的HLのみが独立した有意に正の関連を示した。本研究の結果より,地域在住高齢者の健康関連QOLの向上を図るために,健康情報を読むスキルを身につけるような介入を行う必要があることが示唆された。