第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本予防理学療法学会 一般演題ポスター
予防P13

Sat. May 28, 2016 2:50 PM - 3:50 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-YB-13-4] 自宅退院を控えた回復期リハビリテーション病棟入院患者とその家族における転倒恐怖感の相違について

原泰裕1, 久住治彦1, 西郡亨1, 清水恭兵2, 松田徹2, 原田鉄平3, 加藤研太郎4, 平林弦大5 (1.津田沼中央総合病院, 2.上尾中央総合病院, 3.三郷中央総合病院, 4.上尾中央医療専門学校, 5.新潟保健医療専門学校)

Keywords:転倒恐怖感, 家族, 回復期

【はじめに,目的】

高齢者の転倒経験は身体的な影響のみならず,心理的な影響も引き起こし,遂行可能な動作を避ける等,行動に影響を与える(鈴木2003)。臨床においても,転倒恐怖感を抱いている症例を経験するが,同居家族も患者の転倒に対して恐怖感を抱いていることがある。しかし,現状では家族の抱く恐怖感を十分に把握出来ていない。そこで本研究の目的は,患者と家族の転倒恐怖感を評価し,両者の相違を検証することとした。


【方法】

対象は平成27年8月から10月の間で,某回復期リハビリテーション病棟入院患者の内,退院後に同居予定の患者と家族各7名とした。なお,除外項目は65歳未満・改訂長谷川式簡易知能評価スケール21点未満・うつ病の既往有り・退院後に機能的自立度評価表(FIM)で歩行が5点以下とした。

転倒恐怖感は,Modified Falls Efficacy Scale(MFES)を高得点ほど恐怖感が強いように改変して使用した。患者にはどの程度転倒せずに動作を行えると思うか(主観的MFES),家族には患者がどの程度転倒せずに動作を行えると思うか(客観的MFES)で測定するよう説明した。測定日は退院日決定後で統一した。また,家族には患者との関係性が把握出来るよう,続柄や面会頻度等のアンケートも合わせて聴取した。

統計処理はR2.8.1を使用し,主観的MFESと客観的MFESの合計点をMann-WhitneyのU検定を用いて比較した。有意水準は5%未満とした。また,転倒恐怖感が最も強い項目には,自由記載の文書で理由を求めた。記載内容をGrounded Theory Approach(GTA)を用いて,4名の理学療法士で分析した。


【結果】

主観的MFESと客観的MFESの合計点に有意差は認められなかった(n.s)。

GTAでは,患者が「他者への配慮」「乗り物での移動」「主観的な感情の変化」「歩行距離・速度の変化」,家族が「他者への配慮」「時間帯による変化」「屋外活動」「屋内活動」の各4つのカテゴリに分類された。


【結論】

自立度の高い患者では,家族との転倒恐怖感の強さに相違が少ないことが示唆された。今回対象とした全ての家族において,週2回以上の面会に来ていたとアンケートに記されており,退院時までに患者の状態把握や心情の理解が十分に出来ていたと思われる。その為,患者と家族との関係性に応じて相違が生じる可能性が考えらえた。一方で,GTAでは「他者への配慮」のみ共通していたが,その他のカテゴリでは相違が見られた。相違内容として,患者は移動手段や歩行条件の変化による不安が多く,家族では移動の内容に加え,夜間や外出時の不安等,家族から見えにくい部分の不安が多く記載されていた。主観的な感情が含まれない家族では,限局した内容よりも広い視点で考えやすく,生活全体で捉えた傾向になったものと思われる。このことから,質的には転倒恐怖感の相違が生じている部分があり,患者と家族各々での転倒予防に対する支援が必要であると考える。