第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本予防理学療法学会 一般演題ポスター
予防P15

2016年5月29日(日) 10:00 〜 11:00 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-YB-15-3] 高用量ステロイド治療中のネフローゼ症候群患者における運動療法の有用性の検討

長島正明, 蓮井誠, 山内克哉, 美津島隆 (浜松医科大学医学部附属病院)

キーワード:ネフローゼ症候群, 運動療法, 運動耐容能

【はじめに,目的】ネフローゼ症候群は高度の尿蛋白により低蛋白血症を来す腎臓疾患群の総称である。腎臓病患者に対する運動療法は少なくとも嫌気性作業閾値(以下AT)であれば尿蛋白や腎機能へ影響を与えないことが報告されつつあり,ネフローゼ症候群診療ガイドライン2014においても安静や運動制限の有効性は明らかではなく推奨されていない。一方,ネフローゼ症候群の急性期治療として高用量(0.5>mg/kg/日)ステロイド治療が一般的であるが,ステロイド筋症による筋力低下によってADL制限が顕在化することがある。低用量ステロイド治療患者に対し運動療法が有効であることが報告されているが,高用量ステロイド治療における運動療法の有用性は不明である。本研究の目的は,高用量ステロイド治療中のネフローゼ症候群患者における運動療法の有効性を体組成・筋力・運動耐容能から検証することである。

【方法】対象は高用量ステロイド治療目的で当院腎臓内科に入院したネフローゼ症候群患者で,運動療法の依頼でリハビリテーション科に紹介となったADL自立の60歳代一症例とした。運動療法は週5回実施した。有酸素運動としてATでの自転車駆動30分,筋力運動としてスクワット動作や上肢ダンベル体操をBorg Scale13の強度で実施した。測定は運動療法開始前と退院時に実施した。体組成は体組成計インボディを用い,筋量,脂肪量を測定した。筋力は筋機能評価運動装置BIODEXを用い,等尺性膝伸展最大筋力を膝屈曲90°位で測定した。運動耐容能は心肺運動負荷試験で評価した。心肺運動負荷試験は呼気ガス分析装置および自転車エルゴメータを用い,10wattランプ負荷とし,ATおよび最高酸素摂取量を測定した。ATはV-slope法にて決定した。最高酸素摂取量は症候限界時の酸素摂取量とした。また,体重,食事摂取カロリー,尿蛋白一日量,ステロイド服用量を診療録より記録した。

【結果】入院3週目よりステロイド0.8 mg/kg/日で治療開始され,同時に運動療法開始となった。運動療法は8週間実施され,ステロイドは0.4mg/kg/日まで減量し退院となった。運動療法8週間前後で,体重(kg)は60.4→53.5に減少した。筋量(kg)は26.5→21.8に減少,体脂肪量(kg)は11.0→12.1に増加した。体重比筋力(Nm/kg)は右2.15→1.50,左1.85→1.51に低下した。AT(ml/kg/min)は12.7→15.6,最高酸素摂取量(ml/kg/min)は19.8→20.0に増加した。心肺運動負荷試験の終了理由はペダル50回転維持困難であった。また,入院中の食事は1800kcal全量摂取であり,間食はなかった。尿蛋白一日量(mg/日)の一週間平均値は4095→2159へ改善した。

【結論】本症例において,運動療法によって筋力を維持することは困難であったが,運動耐容能を維持することができた。高用量ステロイド治療中のネフローゼ症候群患者における運動療法の強度の検証が必要である。