第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本予防理学療法学会 一般演題ポスター
予防P15

Sun. May 29, 2016 10:00 AM - 11:00 AM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-YB-15-5] 抗精神病薬内服患者に対する理学療法は肺炎予防に寄与するのか?

神田孝祐, 石橋雄介, 林久恵, 西田宗幹 (医療法人鴻池会秋津鴻池病院)

Keywords:抗精神病薬, 誤嚥性肺炎, 錐体外路症状

【はじめに,目的】

精神科における死因の第1位は肺炎及び気管支炎あり,抗精神病薬の使用が肺炎のリスクを増加させる事が報告されている。松村(2014年)は脳血管障害患者における誤嚥性肺炎発症に活動レベルが関連すると報告しているが精神科領域では年齢,栄養状態,精神状態,抗精神病薬が関連するとされ,身体機能に着目した報告はない。本研究では理学療法(PT)の効果として期待される身体機能向上が肺炎予防に寄与するか検討した。

【方法】

平成27年1月から10月の間に90日間PTを実施した精神科病棟患者の内,開始時に抗精神病薬を内服していた者を介入群とした。対照群は介入群1名に対し,PT非実施患者1名を年齢によってマッチさせ,90日間での肺炎発症率を比較した。調査項目は,年齢,性別,精神疾患名,身体合併症,血液データ(アルブミン,ヘモグロビン),抗精神病薬の種類とし,診療記録より後方視的に調査した。また,介入群の内90日間で肺炎を発症しなかった者は,PT開始時及び90日後のFunctional Independent Measure(FIM),The Global Assessment of Functioning(GAF),Drug Induced Extrapyramidal Scale(DIEPSS)を評価した。肺炎発症率の比較にはχ2検定を用い,介入群でのFIM,GAF,DIEPSSの比較にはマン・ホイットニーのU検定を用いた。いずれも有意水準は5%とした。

【結果】

介入群は18名(年齢70.0±15.2歳,男性9名,女性9名),対照群は18名(年齢69.2±13.9歳,男性5名,女性13名)であった。身体合併症は介入群で運動器10名(55%),内部障害5名(28%),神経系3名(17%),対照群で運動器6名(33%),内部障害12名(67%)であり,既往に肺炎を有す者は介入群5名(28%),対照群4名(22%)であった。90日間での肺炎発症率は介入群11%,対照群17%と差を認めなかった。介入群におけるFIMは開始時43.4±29.3点,90日後59.4±34.3点と有意に改善した(p<0.05)。GAFは開始時40.6±30.8点,90日後47.7±30点と有意な改善を認めなかった。また,DIEPSSの項目のうち,歩行は開始時0.9±1.2,90日後0.6±0.8と有意な改善を認めた(p<0.05)。

【結論】

PT介入の有無で肺炎発症率に差はなく,PT介入が直接的に抗精神病薬内服者の肺炎を予防できるという仮説を裏付ける事が出来なかった。しかし,90日間のPT介入によりADL及び錐体外路症状の歩行に改善を認めた事から,肺炎のリスク要因である,活動に対してPT介入の効果を得られる事が示唆された。本研究では抗精神病薬の使用状況を調査できていない為,今後,検討する必要がある。