第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本予防理学療法学会 一般演題ポスター
予防P16

2016年5月29日(日) 10:00 〜 11:00 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-YB-16-1] 脳血管疾患の既往がある要支援及び軽度要介護高齢者の重度化に関わる運動機能

637名における2年間の追跡調査

今田樹志1, 林悠太1, 波戸真之介1, 小林修1, 島田裕之2 (1.株式会社ツクイ, 2.国立長寿医療研究センター)

キーワード:脳血管疾患, 要介護高齢者, 運動機能

【はじめに,目的】

我が国の要介護認定者数は平成24年度末で545.7万人と増加の一途をたどっている(平成27年版高齢者社会白書)。その中で,介護が必要になった主な原因として「脳血管疾患」が17.2%と最も多く,脳血管疾患をもつ高齢者のどのような運動機能が要介護度の重度化に至る原因として重要であるか明らかにすることは,効果的な理学療法を提供する上で重要である。そこで本研究の目的は2年間の追跡調査によって要介護度の重度化に影響を与える運動機能とCut-off pointを明らかにし,効果的なサービスの提供につなげることとした。

【方法】

対象は通所介護サービスを2年以上継続して利用していた要支援,軽度要介護高齢者637名(年齢81.0±6.9歳,男性305名,女性332名)であり,ベースライン時の要介護度の内訳は,要支援1が84名,要支援2が99名,要介護1が270名,要介護2が184名であった。運動機能の測定には握力,chair stand test(CST),6m歩行速度,timed up & go test(TUG)を用いた。要支援,要介護高齢者それぞれに関して,ベースライン時から2年間で要介護度が維持または改善した者を維持・改善群,重度化した者を悪化群として2群に分けた。要支援,要介護高齢者の維持・改善群と悪化群の各変数の比較をするため,性別はχ2検定,年齢,握力,歩行速度は対応のないt検定,CST-5,開眼片足立ち,TUGはMann-WhitneyのU検定を用いて単変量分析を行った。有意な関連が認められた項目に対してreceiver operating characteristic(ROC)曲線を用い,Youden indexを使用して各測定項目の重度化に関わるcut-off値を算出し,加えてAUC,感度,特異度を算出した(有意水準5%未満)。

【結果】

単変量分析より,要支援高齢者では全ての項目において維持・改善群と悪化群間での有意差がみられなかった。一方軽度要介護高齢者では握力,歩行速度では維持・改善群が悪化群と比べ全ての項目において有意に高値を示した。Youden indexから算出したcut-off値は握力13.5kg(感度:0.73,特異度:0.35,AUC:0.54),CST-5 19.1秒(感度:0.24,特異度:0.54,AUC:0.39),歩行速度10.1秒(感度:0.36,特異度:0.28,AUC:0.32),TUG 13.5秒(感度:0.58,特異度:0.11,AUC:0.31)であった。

【結論】

脳血管疾患をもつ要介護高齢者において,各運動項目でのcut-off値が縦断調査により算出された。脳血管疾患を罹患されている高齢者の重度化予防に対する理学療法介入において有効な評価指標となることが示唆された。今後は運動機能以外の因子など疾患による他の影響についても検証していく必要があるが,本研究により脳血管疾患をもつ高齢者における効果的な理学療法介入への一助となると考える。