第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本予防理学療法学会 一般演題ポスター
予防P17

Sun. May 29, 2016 10:00 AM - 11:00 AM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-YB-17-1] 歩行開始時の逆応答現象に関する要因の検討

梶迫美沙子, 尾﨑裕子, 鈴木英嗣, 森山孝之 (京都南病院)

Keywords:圧中心, 歩行開始, 運動制御

【はじめに,目的】

歩行開始の足底圧中心(以下:COP)は安静立位から遊脚側後方への移動が引き金となり,身体重心(以下:COG)の立脚側前方移動に繋がる。このCOPの移動を逆応答現象という(関屋2001)。先行症例研究にて歩行開始のみ転倒傾向が生じ,実用性低下を認める症例を経験した。骨盤,体幹に対して治療したことにより,立位姿勢が改善したことで逆応答現象が生じ,歩行の実用性が向上した。そのため,本研究の目的は,逆応答現象が生じる群(以下:生じる群)と生じない群(以下:生じない群)でアラインメントや筋力を比較し,逆応答現象との関係を検討することである。


【方法】

対象者は65歳以上の13例とした。評価項目は,逆応答現象の有無,股関節伸展・足関節底屈筋力,円背指数,静止立位の股関節屈曲角度とした。重心動揺計を用いて静止立位からステップ時のCOPを計測し,生じる群と生じない群に分類した。2群に分けて円背指数,股関節屈曲角度をマン・ホイットニーのU検定を用いて比較した。下肢筋力は,MMT3以下と4以上に分け,Fisherの直接確率法を用いた。


【結果】

13例中,生じる群は5例,生じない群は8例であった。生じる群に比べ,生じない群は股関節伸展・足関節底屈筋力がMMT3以下である傾向を示し,有意差を認めた(p<0.05)。また,生じる群に比べ,生じない群で有意に円背指数が高く,股関節屈曲傾向を示唆した(p<0.05)。


【結論】

生じない群は,股関節伸展・足関節底屈筋力がMMT3以下となる傾向を示した。これらの筋は静止立位から歩行開始にかけてのCOG前方移動を制御するために働くと考える。そのため,歩行開始におけるCOGの制御を妨げる要因として,股関節伸展・足関節底屈筋力低下を示唆すると考えた。また,生じない群は円背,股関節屈曲の傾向を示した。静止立位より円背,股関節屈曲傾向を示すことでCOGが股関節より前方へ位置するため股関節屈曲モーメントが増大することが考えられる。このため,股関節伸展筋が姿勢保持に働き,歩行開始のCOG前方移動に働く股関節伸展筋が不効率になると考えた。そのため,歩行開始のCOG前方移動を妨げる要因として,円背,股関節屈曲傾向を示唆すると考えた。これら,4つの因子はCOG前方移動の制御に関係があり,COG前方移動を制御できなければCOPの制御すなわち逆応答現象が生じず,効率の良い歩行開始が困難になると考える。今回の研究より円背指数,股関節屈曲角度,股関節伸展筋力,足関節底屈筋力を評価することで,円滑に体重移動を行うための治療アプローチに応用できると考える。