第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本予防理学療法学会 一般演題ポスター
予防P17

Sun. May 29, 2016 10:00 AM - 11:00 AM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-YB-17-2] 後ろ歩きに着目した転倒予測因子の検討

~地域在住高齢者を対象として~

鳥山海樹1,3, 古後晴基2, 上城憲司2, 大田尾浩2, 山下裕3, 古澤元1, 吉田大地1, 井上忠俊3, 溝田勝彦2 (1.医療法人社団豊泉会丸山病院, 2.西九州大学リハビリテーション学部, 3.西九州大学大学院生活支援科学研究科)

Keywords:後ろ歩きの歩数, 後ろ歩き, 転倒

【はじめに,目的】

転倒予測についての多くは前方歩行や方向転換の要素を加味したもの,また二重課題などを組み合わせたものである。だが,ドアの開閉動作や家事動作など生活場面では,後方へのステップは必須の動作といえる。実際,転倒実態調査においても後方転倒は2割程度存在する。しかしながら,後方へのステップを考慮した評価バッテリーは見あたらない。そこで本研究は,身体・認知・移動手段に後ろ歩きのパラメータを加えて,転倒経験の有無との関係について検討することとした。


【方法】

対象は65歳以上の地域在住高齢者30名(男性13名,女性17名,年齢76.4±6.4歳)とした。過去1年間の転倒経験の有無別に転倒群7名(男性2名,女性5名,年齢77.7±3.6歳)と非転倒群23名(男性11名,女性12名,年齢76.0±7.0歳)に分類した。なお,両群の属性に差は認められなかった。また,測定に影響を及ぼすと考えられる中枢神経疾患・整形外科疾患を有する者は除外した。

測定項目は握力,重心動揺(開眼・閉眼),MMSE,自由歩行(速度・歩数),早足歩行(速度・歩数),二重課題歩行(速度・歩数),横歩き(速度・歩数),後ろ歩き(速度・歩数)とした。各歩行評価の測定距離は,自由・早足・二重課題歩行(動物想起課題)は10m,横歩き・後ろ歩きは5mとした。なお,横歩き・後ろ歩きの測定中は近距離で見守りを行い転倒しないよう十分に配慮した。転倒群・非転倒群別に各項目をMann-Whitney検定にて比較した。次に有意差を認めた項目にから,転倒経験を従属変数とした多重ロジスティック回帰分析(尤度比による変数増加法)を行った。有意に抽出された変数からROC曲線(receiver operating characteristic)を求め,カットオフ値を算出した。統計学解析はSPSSver.21.0を用いて有意水準は5%とした。


【結果】

多重ロジスティック回帰分析において選択されたのは,後ろ歩きの歩数であり,判別的中率は89.3%であった。5mの後ろ歩きの歩数の測定値は,転倒群で19.86±7.69歩,非転倒群で12.16±4.09歩であった。後ろ歩きの歩数のオッズ比は1.259倍(95%信頼区間1.042~1.521)モデルχ2検定の結果はp<0.01と有意であった。次に,ROC曲線下面積(AUC)は0.823(95%信頼区間0.665~0.981)でカットオフ値は13歩(感度1.000,特異度0.600)であった。なお後ろ歩きの歩数が13歩未満の15名全てが転倒しておらず,24歩以上の3名全てが転倒していた。


【結語】

過去1年間の転倒経験の有無と,身体・認知・移動手段の関係を検討した。その結果,後ろ歩きの歩数が選択され,後ろ歩きの際の歩数と転倒経験の有無との関連が示唆された。後ろ歩きの歩数が1歩増加すると転倒リスクが1.259倍も高くなることが示された。今回,実際の場面で観察される後ろ歩きが選択されたことから,転倒予測の評価指標として有用である可能性がある。今後,安全性や評価の適応範囲などについての検討が必要であると考える。