第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本予防理学療法学会 一般演題ポスター
予防P17

2016年5月29日(日) 10:00 〜 11:00 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-YB-17-3] 若年健常成人における屋外坂道歩行の歩行周期時間変動

植谷欣也1,4, 栄健一郎1, 西田佳史2, 北村光司2, 松本大輔3, 三栖翔吾4,5, 澤龍一4, 小野玲4 (1.適寿リハビリテーション病院, 2.産業技術総合研究所, 3.畿央大学, 4.神戸大学, 5.神戸市立医療センター西市民病院)

キーワード:屋外歩行, 傾斜, 運動学的分析

【はじめに,目的】

転倒の46.7%は屋外で発生し(Kelseyら,2010),坂道の使用が転倒の危険因子の一つ(鳥羽ら,2005)であることから,坂道の多い地域の高齢者は外出時に転倒する危険が高まると考えられる。しかし現実的には坂道を利用せざるを得ない場合も多く,坂道歩行の安全性の客観的判断が求められる。歩行周期時間変動(STV)は歩行の客観的評価指標の一つであるが,屋外坂道の傾斜角による影響は検討されていない。Layら(2005)は関節モーメントの解析結果から8.5°と21°の坂道歩行は平地歩行とは制御方略が異なると報告しており,屋外坂道歩行時のSTVは平地歩行におけるそれとは異なることが考えられる。

そのため本研究はその基礎研究として,若年健常成人を対象に屋外坂道歩行における傾斜角とSTVの関係を明らかにすることを目的とした。

【方法】

対象は若年健常成人15名(男性:7名,女性:8名,平均年齢:28.5±3.9歳)とした。

対象者の身体機能として握力,Functional Reach Test(FR),Timed Up and Go Test(TUG)を計測した。

歩行周期時間変動の計測には3軸加速度計(ATR Promotions,TSND121)を用いた。加速度計は第三腰椎部に装着した(加速度レンジ:±8 G,サンプリング周波数:200 Hz)。また胸骨下部にビデオカメラ(GOPRO,HERO 3)を装着し,歩行中の足元を撮影した。

計測の条件は屋内平地歩行と屋外坂道歩行とした。屋外坂道の傾斜角はAndroid搭載タブレットのGlobal Positioning System受信機,3軸加速度センサ,3軸地磁気センサから取得した情報を基に算出した。屋内平地歩行では19mの廊下を歩行した(FLAT)。屋外坂道歩行は25mの歩行路(平均傾斜角10°)を使用し,上りと下りを1回ずつ計測した(各々10-UP,10-DN)。全条件で,中央16mを解析対象とした。屋外坂道歩行の順番はランダム化し,各計測の間には座位で2分以上休憩した。得られたデータから,ケイデンスと歩幅,歩行速度,STVを算出した。本研究におけるSTVは歩行周期時間の変動係数を採用した。

統計学的分析は統計ソフト(R version 3. 2. 2)で実施した。条件間の比較は一要因の反復測定分散分析を用い,必要に応じてFriedman検定を行った。条件間に有意差を認めた場合にはHolm法による事後検定を行った。有意水準は5%に設定した。

【結果】

対象者の握力は32.3±7.4 kg,FRは34.0±3.2 cm,TUGは7.6±1.1 secであった(いずれも平均±標準偏差)。

10-DNのケイデンス,歩幅,歩行速度はFLAT,10-UPよりも有意に大きかった(いずれもp<0.01)。STVは条件による主効果を認めなかった(10-DN,3.25±1.98%;FLAT,2.23±0.97%;10-UP,2.18±0.82%;p=0.155)。

【結論】

傾斜角10°の屋外坂道歩行では下り坂において平地,上り坂と比較して歩行速度が増加したが,STVの増減は認められなかった。本研究は基礎研究であり,今後は高齢者や疾患を有する者で検討していく必要がある。