[P-YB-17-5] 擬似高齢者による滑り易い床面での歩行の検討
Keywords:滑路面, 擬似高齢者, 歩行
【はじめに,目的】高齢者が屋外歩行を行う際には,環境の変化は大きな影響を与える。特に,雨などで濡れた路面や凍結路面などの環境因子が一番の問題として挙げられる。滑路面歩行における,Initial Contactについての報告や研究は多く行われているが,Terminal Stance(以下,TSt)~Pre Swing(以下,PSw)についての研究は少ない。そこで,本研究の目的は擬似高齢者での滑り易い床面(以下,滑路面)における歩行中のTSt~PSwの関節角度などの動作姿勢と動作時間について計測し,健常者群と擬似高齢者群を比較検証する。これにより高齢者の滑路面歩行での動作要因を明らかにし,高齢者の外出機会の拡大につながる基礎研究の資料とする。
【方法】対象は健常若年者20名(男女10名)で,年齢は20歳~22歳である。滑路面と通常面での歩行を,高齢者体験装具おいたろう(株式会社京都科学)の有無2条件で実施した。滑路面の設定としては,先行研究より滑り易いとされている,滑り摩擦係数0.30となるように,ランプテストを用いて設定した。臨床歩行研究会の規定に準じて27箇所に反射マーカーを貼付し,三次元動作解析ソフトFrame-DIASV(株式会社DKH)を使用し,高齢者体験装具装着有無の足関節,膝関節,股関節,体幹の関節角度と動作時間を測定し,比較検証した。統計処理は,マーカーの不具合が生じた2名を除いた18名において,Wilcoxonの符号付き順位検定を用いた。
【結果】健常者群では通常面での膝関節屈曲角度が57.7°であったのに対し,滑路面では52.9°と有意な減少を認めた。さらに映像上から滑路面においては中足趾節関節が伸展位となっていることが確認された。しかし,その他の関節に関しては有意な差を認めなかった。擬似高齢者群では各関節に有意な差を認めなかったが,滑路面において健常者群の体幹伸展角度の変化が6%の増加であったの対し,擬似高齢者群での体幹の伸展角度は22%の減少となった。その中でも,体幹屈曲を行う群と,体幹伸展を維持する群の2つがあることが示唆された。動作時間では両群とも有意な差を認めなかった。
【結論】今回の研究においては,健常者群では下肢関節で姿勢を安定させるが,擬似高齢者群では下肢ではなく,体幹を使い全身で姿勢の安定を図ることが示唆された。動作時間は,環境変化を予測し運動パターンを変更することで,動作時間の遅延は認めなかった。今回の研究では,擬似高齢者の滑路面歩行ではそれぞれの関節角度に変化がみられ,歩行姿勢に大きな差が表れることを予測していたが,関節角度に大きな変化はみられなかった。このことについては,高齢者体験装具に対して,姿勢には表れない身体中枢部の筋活動や大脳皮質からの姿勢コントロールが関与し,予測していた結果が得られなかった。そこで今後の課題は,健常者に対してさらに高齢者に近い擬似高齢者の設定を行えるように,関節角度の制限や感覚入力を阻害する因子を追加するなどの検討が必要である。
【方法】対象は健常若年者20名(男女10名)で,年齢は20歳~22歳である。滑路面と通常面での歩行を,高齢者体験装具おいたろう(株式会社京都科学)の有無2条件で実施した。滑路面の設定としては,先行研究より滑り易いとされている,滑り摩擦係数0.30となるように,ランプテストを用いて設定した。臨床歩行研究会の規定に準じて27箇所に反射マーカーを貼付し,三次元動作解析ソフトFrame-DIASV(株式会社DKH)を使用し,高齢者体験装具装着有無の足関節,膝関節,股関節,体幹の関節角度と動作時間を測定し,比較検証した。統計処理は,マーカーの不具合が生じた2名を除いた18名において,Wilcoxonの符号付き順位検定を用いた。
【結果】健常者群では通常面での膝関節屈曲角度が57.7°であったのに対し,滑路面では52.9°と有意な減少を認めた。さらに映像上から滑路面においては中足趾節関節が伸展位となっていることが確認された。しかし,その他の関節に関しては有意な差を認めなかった。擬似高齢者群では各関節に有意な差を認めなかったが,滑路面において健常者群の体幹伸展角度の変化が6%の増加であったの対し,擬似高齢者群での体幹の伸展角度は22%の減少となった。その中でも,体幹屈曲を行う群と,体幹伸展を維持する群の2つがあることが示唆された。動作時間では両群とも有意な差を認めなかった。
【結論】今回の研究においては,健常者群では下肢関節で姿勢を安定させるが,擬似高齢者群では下肢ではなく,体幹を使い全身で姿勢の安定を図ることが示唆された。動作時間は,環境変化を予測し運動パターンを変更することで,動作時間の遅延は認めなかった。今回の研究では,擬似高齢者の滑路面歩行ではそれぞれの関節角度に変化がみられ,歩行姿勢に大きな差が表れることを予測していたが,関節角度に大きな変化はみられなかった。このことについては,高齢者体験装具に対して,姿勢には表れない身体中枢部の筋活動や大脳皮質からの姿勢コントロールが関与し,予測していた結果が得られなかった。そこで今後の課題は,健常者に対してさらに高齢者に近い擬似高齢者の設定を行えるように,関節角度の制限や感覚入力を阻害する因子を追加するなどの検討が必要である。