[P-YB-19-1] 人工膝関節全置換術患者の退院後における身体活動量と影響を及ぼす因子の検討
―膝伸展筋力と自己効力感向上の重要性―
Keywords:人工膝関節全置換術, 身体活動量, 自己効力感
【はじめに,目的】
人工膝関節全置換術(TKA)は疼痛や身体機能を改善し,生活の質を高めるために行われる。しかしながら手術前から膝の痛みや身体機能の低下が生じ,健常者よりも身体活動量が低下しており,TKA後も身体活動量は低いといわれている。TKA患者においても三次予防を目的とした身体活動の向上に対する取り組みが重要である。
これまでにTKA患者の身体活動量についての報告は散見されるが,TKA患者の退院後における身体活動量とその関連要因については明らかではない。そこで本研究ではTKA患者の身体活動量を調査し,その影響を及ぼす因子について検討した。
【方法】
対象は変形性膝関節症により初回TKAを施行し,退院後も外来リハビリテーションを実施した患者50例57膝とした。両側例は手術間隔を3ヵ月以上空けて実施した。手術時年齢は73.9±6.2歳,BMI26.1±3.8 kg/m2,術後在院日数25.2±9.6日で,外来リハビリテーションを週1回の頻度で術後3カ月間継続した。その際,自主トレーニングの指導と身体活動量を向上するように促した。
身体活動量を歩数と定義し,計測には活動量計AM-120(タニタ社製,カロリズム)を連続7日間装着し平均歩数を算出した。身体機能評価はTimed up and go test(TUG),開眼片脚起立時間,30秒椅子立ち上がりテスト,5m最大歩行速度,膝伸展筋力を測定した。Western Ontario and McMaster Universities OA Index(WOMAC)を用いて,膝関節の痛みと機能について評価した。自己効力感の評価として,虚弱高齢者の身体活動セルフ・エフィカシー(SE)尺度(歩行,階段,重量物)を用いた。各測定は術後3ヵ月に実施した。
統計解析は,身体活動量と各検討項目との関連性をSpearmanの順位相関計数にて分析した。さらに身体活動量と相関のあった各因子を独立変数,身体活動量を従属変数としてステップワイズ法による重回帰分析を行った。統計解析はSPSS ver.19.0を用いて有意水準は5%とした。
【結果】
TKA患者の退院後ににおける身体活動量は2886.5±1847.2歩であった。
身体活動量とTUG(r=-0.264,p<0.05),術側開眼片脚起立時間(r=0.312,p<0.05),非術側開眼片脚起立時間(r=0.339,p<0.01),術側膝伸展筋力(r=0.306,p<0.05),非術側膝伸展筋力(r=0.299,p<0.05),5m最大歩行速度(r=-0.471,p<0.01),歩行SE(r=0.465,p<0.01),階段SE(r=0.340,p<0.05)との間に有意な相関を示した。重回帰分析の結果,身体活動量の影響因子として術側膝伸展筋力(β=0.416,p<0.01)と歩行SE(β=0.321,p<0.01)が抽出された(R=0.549)。
【結論】
TKA患者の退院後における身体活動量は極めて低く,その影響因子として身体機能では術側膝伸展筋力と心理的要因として歩行SEが重要であることが示唆された。TKA患者の身体活動量を向上させるためには膝伸展筋力強化のための筋力トレーニングに加え,歩行に関する自己効力感を高める方策が必要であることが示唆された。
人工膝関節全置換術(TKA)は疼痛や身体機能を改善し,生活の質を高めるために行われる。しかしながら手術前から膝の痛みや身体機能の低下が生じ,健常者よりも身体活動量が低下しており,TKA後も身体活動量は低いといわれている。TKA患者においても三次予防を目的とした身体活動の向上に対する取り組みが重要である。
これまでにTKA患者の身体活動量についての報告は散見されるが,TKA患者の退院後における身体活動量とその関連要因については明らかではない。そこで本研究ではTKA患者の身体活動量を調査し,その影響を及ぼす因子について検討した。
【方法】
対象は変形性膝関節症により初回TKAを施行し,退院後も外来リハビリテーションを実施した患者50例57膝とした。両側例は手術間隔を3ヵ月以上空けて実施した。手術時年齢は73.9±6.2歳,BMI26.1±3.8 kg/m2,術後在院日数25.2±9.6日で,外来リハビリテーションを週1回の頻度で術後3カ月間継続した。その際,自主トレーニングの指導と身体活動量を向上するように促した。
身体活動量を歩数と定義し,計測には活動量計AM-120(タニタ社製,カロリズム)を連続7日間装着し平均歩数を算出した。身体機能評価はTimed up and go test(TUG),開眼片脚起立時間,30秒椅子立ち上がりテスト,5m最大歩行速度,膝伸展筋力を測定した。Western Ontario and McMaster Universities OA Index(WOMAC)を用いて,膝関節の痛みと機能について評価した。自己効力感の評価として,虚弱高齢者の身体活動セルフ・エフィカシー(SE)尺度(歩行,階段,重量物)を用いた。各測定は術後3ヵ月に実施した。
統計解析は,身体活動量と各検討項目との関連性をSpearmanの順位相関計数にて分析した。さらに身体活動量と相関のあった各因子を独立変数,身体活動量を従属変数としてステップワイズ法による重回帰分析を行った。統計解析はSPSS ver.19.0を用いて有意水準は5%とした。
【結果】
TKA患者の退院後ににおける身体活動量は2886.5±1847.2歩であった。
身体活動量とTUG(r=-0.264,p<0.05),術側開眼片脚起立時間(r=0.312,p<0.05),非術側開眼片脚起立時間(r=0.339,p<0.01),術側膝伸展筋力(r=0.306,p<0.05),非術側膝伸展筋力(r=0.299,p<0.05),5m最大歩行速度(r=-0.471,p<0.01),歩行SE(r=0.465,p<0.01),階段SE(r=0.340,p<0.05)との間に有意な相関を示した。重回帰分析の結果,身体活動量の影響因子として術側膝伸展筋力(β=0.416,p<0.01)と歩行SE(β=0.321,p<0.01)が抽出された(R=0.549)。
【結論】
TKA患者の退院後における身体活動量は極めて低く,その影響因子として身体機能では術側膝伸展筋力と心理的要因として歩行SEが重要であることが示唆された。TKA患者の身体活動量を向上させるためには膝伸展筋力強化のための筋力トレーニングに加え,歩行に関する自己効力感を高める方策が必要であることが示唆された。