第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本予防理学療法学会 一般演題ポスター
予防P19

2016年5月29日(日) 11:10 〜 12:10 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-YB-19-5] 改良版側方リーチテストの検討

尾関伸哉1,3, 大井慶太2, 鳥居昭久3 (1.ナースコール在宅センター訪問サービス尾頭橋リハビリCLUB, 2.鵜飼病院リハビリテーション科, 3.愛知医療学院短期大学リハビリテーション学科)

キーワード:側方リーチテスト, 指示棒, 信頼性

【はじめに,目的】

高齢者の転倒に関する報告では側方へのバランス能力が転倒予測やADL能力と関連があるとされている。側方への動的バランス能力の指標として,上肢を側方へ最大限伸ばした距離を計測する側方リーチテスト(以下LRT)があり,これは動的バランスの評価として有用であると報告されている。

原著ではLRTの測定は方眼紙を用いて行うが,方眼紙を壁に固定するスペースが必要であり,測定値を目視によって読み取るため誤差が生じやすいという問題点がある。そこで,LRTの問題を解消するため伸縮可能な指示棒を用いた改良版LRT(以下M-LRT)を考案した。このM-LRTは測定が簡便であり,従来のLRTと同様に信頼性,妥当性が高いと予測される。今回,健常者を対象にM-LRTの信頼性および基準関連妥当性について検討した。

【方法】

対象は健常学生17名(男性5名,女性12名,年齢19.5±0.7歳,身長163.8±7.4cm,体重58.0±7.1cm)。従来のLRTは原著と我々の先行研究の方法に準じて実施した。

M-LRTは市販の伸縮可能な指示棒(M-FR ROD;レモン社製)を用いて実施。被験者は最長に伸ばした指示棒を把持し側方へ最大限リーチを行う。検者は短縮した指示棒の長さをメジャーで計測し,差し引いた長さをリーチ距離として算出した。両者とも2回の練習後,3回測定を実施,最大値を採用した。

統計解析はM-LRTの検者内・検者間信頼性について級内相関係数(以下ICC)を算出し検討した。また,ICCでは検出できない系統誤差についてはBland-Altman分析を用いて検討した。さらに,測定値に含まれる偶然誤差の量を明らかにするため最小可検変化量の95%信頼区間(以下MDC95)を求めた。また,M-LRTの基準関連妥当性についてPearsonの相関係数を用いて従来のLRTとの関連について検討した。統計解析にはR2.8.1を用いて行い,統計学的有意水準は5%未満とした。

【結果】

検者内ICCは右LRT0.91,左LRT0.92,右M-LRT0.87,左M-LRT0.91であった。検者間ICCでは右LRT0.73,左LRT0.91,右M-LRT0.91,左M-LRT0.90であった。Bland-Altman分析からM-LRTにおいて検者内・検者間ともに加算誤差,比例誤差は存在しないことが確認された。MDC95では検者内は右M-LRT3.5cm,左M-LRT3.0cm,検者間は右M-LRT2.8cm,左M-LRT3.0cmであった。基準関連妥当性についてはLRTとM-LRTの相関は左右ともr=0.89であった。

【結論】

M-LRTは検者内・検者間信頼性とも高値であり,相対信頼性が高い検査法であることが示された。また,系統誤差も存在しないことが確認され,MDC95も臨床応用可能な測定精度と考えられる。さらに,従来のLRTとM-LRTとの間に有意に高い相関関係が示された。よって,M-LRTは従来のLRTの測定と同様の結果が得られ,動的バランスや転倒予測の評価手段の一つとして有用である。また,臨床現場や在宅においても簡便なうえに信頼できる検査方法として応用が期待できる。