第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本予防理学療法学会 一般演題ポスター
予防P20

Sun. May 29, 2016 11:10 AM - 12:10 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-YB-20-4] 要支援者における転倒リスク評価の検討

堀田陽平1, 後藤伸介2 (1.芦城クリニック, 2.やわたメディカルセンター)

Keywords:要支援者, 転倒, 評価

【はじめに,目的】障害を有する高齢者の転倒や骨折頻度は健康な高齢者よりも高いといわれている。当事業所でも転倒リスクのスクリーニングを行うために運動機能評価を行っているが,それによる転倒リスクの判別は必ずしも当てはまってはいない。本研究の目的は,当事業所を利用開始となった要支援者を対象に,「過去3ヶ月間の転倒経験の有無」と「運動機能評価」の結果を分析し,要支援者に対する転倒リスクの評価方法を検討することである。

【方法】対象は2009年5月から2015年8月の期間に短時間通所リハビリテーションを利用開始となった要支援者のうち,独歩または杖歩行にて屋内の移動が自立している74名(脳血管疾患18名,運動器疾患49名,その他7名)とした。転倒歴については利用開始時に質問用紙を用いて過去3ヶ月間の転倒経験の有無を聴取し,転倒群(F)・非転倒群(NF)の2群に分類した。運動機能評価としてCS30,開眼片足立位時間,TUG,10m歩行時間を行った。生活機能評価として質問用紙にて外出頻度,買い物の遂行度,転倒不安度を5段階に分けて聴取した。分析1:両群の年齢,運動機能評価の結果をt検定にて分析し,生活機能評価の結果をMann-Whitney U検定にて分析した。有意水準は5%未満とした。分析2:上記にて両群間に有意差の認められた運動機能評価と転倒との関連性をROC曲線で表し,カットオフ値を求めた。

【結果】質問用紙の結果から転倒群は27名(年齢78.9±10.1歳),非転倒群は47名(年齢78.6±6.6歳)であり,転倒発生率は36.5%であった。分析1:両群の年齢に有意差は認められなかった。運動機能評価ではTUG(F:12.8±4.0秒,NF:11.0±3.7秒)と歩行速度(F:0.93±0.2m/秒,NF:1.1±0.3m/秒)に有意差が認められた。生活機能評価では聴取した項目について両群間に有意差は認められなかった。分析2:TUGと歩行速度について,転倒経験の有無を状態変数としてROC曲線を求めたところAUCはTUG:0.67,10m歩行時間:0.34であった。上記よりTUGが最も正確性が高いと判断されたため,TUGのカットオフ値を求めたところ10.4秒であった。両群におけるTUGのカットオフ値でのクロス集計表の結果より,転倒予測の感度は81.5%,特異度は57.4%,適中精度は66.2%であった。

【結論】要支援者における転倒リスクの評価としてはTUGが有用と考えられ,そのカットオフ値は10.4秒であった。しかし,Cookらの地域在住高齢者を対象にした研究では13.5秒と報告されており,これは本調査の対象者に神経系障害を有する者が多かったことが影響していたと考えられた。以上より,TUGを用いた要支援者の転倒リスク評価は,一般高齢者に比べ,その判定水準を下げる必要があることが示唆された。