[P-YB-20-5] 地域在住後期高齢女性におけるSlowness発生の予測因子
2年間の縦断的調査研究
Keywords:後期高齢者, 歩行速度, 予測因子
【はじめに,目的】
Slownessはフレイルの構成要素の1つであるが,単独でも障害,心血管イベント,死亡などと関連することが報告されている。したがって,Slowness発生のリスクを早期に予測し,予防方策を講ずることが必要であるが,これまでSlowness発生の予測因子を検討した報告はない。そこで本研究の目的を,地域在住後期高齢女性を対象に,Slowness発生の予測因子を探索することとした。
【方法】
対象は名古屋大学山田研究室で進行中の「地域在住後期高齢者の身体活動量低下の予測因子を探索する前向きコホート研究」に参加する75歳以上の地域在住高齢女性で,初回調査時にSlownessに該当しない者とした。Slownessの判断基準は,本邦における地域在住高齢者を対象とする大規模疫学研究にて有用性が示されている,普通歩行速度1.0m/秒未満とした。2012~2013年に行った初回調査にて,10m普通歩行速度,年齢,Body Mass Index,既往歴,腰痛/下肢痛,握力,膝伸展筋力(体重比),Mini Mental State Examination,ΔTMT(Trail Making Test BとAの差),Functional Reach Test(FRT),下腿周囲長,歩数,中等強度以上の活動時間,Geriatric Depression Scale-5,Mini Nutritional Assessmentを調査した。2年後の調査(2014~2015年)でSlownessに該当することを目的変数とし,各調査項目を独立変数とするロジスティック回帰分析(年齢・初回評価時の10m普通歩行速度で調整)を行った。さらに,有意に関連した変数を多変量解析(変数増加法)に投入した。データ欠損のある者は解析から除外した。統計解析にはSPSS ver. 23を用い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
追跡調査に成功しデータ欠損のなかった203名(平均年齢:79.3±3.1歳)を解析対象とした。Slowness発生率は8.9%(18名)であった。年齢・10m普通歩行速度を調整因子としたロジスティック回帰分析では,高血圧,脳卒中,腰痛/下肢痛,握力,膝伸展筋力,中等強度以上の活動時間,FRT,ΔTMTがSlowness発生と関連した。次に,多変量ロジスティック回帰分析の結果,膝伸展筋力(調整済オッズ比:0.84,95%CI:0.77-0.93,per 1kgf/kg increment),ならびにΔTMT(調整済オッズ比:1.01,95%CI:1.00-1.02,per 1秒increment)が抽出された。
【結論】
後期高齢女性におけるSlowness発生のリスクを早期発見するため,下肢筋力および遂行機能のスクリーニングが有用であると考えられた。今後,下肢筋力や遂行機能の維持によってSlowness発生を抑制できるか検証することが課題である。
Slownessはフレイルの構成要素の1つであるが,単独でも障害,心血管イベント,死亡などと関連することが報告されている。したがって,Slowness発生のリスクを早期に予測し,予防方策を講ずることが必要であるが,これまでSlowness発生の予測因子を検討した報告はない。そこで本研究の目的を,地域在住後期高齢女性を対象に,Slowness発生の予測因子を探索することとした。
【方法】
対象は名古屋大学山田研究室で進行中の「地域在住後期高齢者の身体活動量低下の予測因子を探索する前向きコホート研究」に参加する75歳以上の地域在住高齢女性で,初回調査時にSlownessに該当しない者とした。Slownessの判断基準は,本邦における地域在住高齢者を対象とする大規模疫学研究にて有用性が示されている,普通歩行速度1.0m/秒未満とした。2012~2013年に行った初回調査にて,10m普通歩行速度,年齢,Body Mass Index,既往歴,腰痛/下肢痛,握力,膝伸展筋力(体重比),Mini Mental State Examination,ΔTMT(Trail Making Test BとAの差),Functional Reach Test(FRT),下腿周囲長,歩数,中等強度以上の活動時間,Geriatric Depression Scale-5,Mini Nutritional Assessmentを調査した。2年後の調査(2014~2015年)でSlownessに該当することを目的変数とし,各調査項目を独立変数とするロジスティック回帰分析(年齢・初回評価時の10m普通歩行速度で調整)を行った。さらに,有意に関連した変数を多変量解析(変数増加法)に投入した。データ欠損のある者は解析から除外した。統計解析にはSPSS ver. 23を用い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
追跡調査に成功しデータ欠損のなかった203名(平均年齢:79.3±3.1歳)を解析対象とした。Slowness発生率は8.9%(18名)であった。年齢・10m普通歩行速度を調整因子としたロジスティック回帰分析では,高血圧,脳卒中,腰痛/下肢痛,握力,膝伸展筋力,中等強度以上の活動時間,FRT,ΔTMTがSlowness発生と関連した。次に,多変量ロジスティック回帰分析の結果,膝伸展筋力(調整済オッズ比:0.84,95%CI:0.77-0.93,per 1kgf/kg increment),ならびにΔTMT(調整済オッズ比:1.01,95%CI:1.00-1.02,per 1秒increment)が抽出された。
【結論】
後期高齢女性におけるSlowness発生のリスクを早期発見するため,下肢筋力および遂行機能のスクリーニングが有用であると考えられた。今後,下肢筋力や遂行機能の維持によってSlowness発生を抑制できるか検証することが課題である。