The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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[AAS-1] 企画1 筋膜マニピュレーションの理論と実際

Fri. May 12, 2017 4:50 PM - 5:50 PM A3会場 (幕張メッセ国際会議場 中会議室201)

司会:小川 大輔(目白大学保健医療学部理学療法学科)

産学連携セッション

[AAS-1] 筋膜マニピュレーションの理論と実際

竹井 仁 (首都大学東京大学院人間健康科学研究科理学療法科学域)

筋膜機能異常は,これまでの姿勢や運動の癖,生活環境,過用,不良姿勢,誤った運動パターンに加え,既往歴(外傷,障害,手術)が複雑に絡み合って生じる。
筋膜機能異常は,筋膜高密度化・基質のゲル化・ヒアルロン酸凝集化の3つが原因として生じる。
深筋膜(腱膜筋膜)は,3層構造で筋上を覆う。筋外膜は筋を包む薄い膜で,筋周膜と筋内膜へ連続している。筋外膜からは深筋膜へ筋線維の一部が挿入しており,これによって,深筋膜は関節を越えて,筋外膜の緊張を他の筋へと伝播する。
腱は,筋周膜と筋内膜の波状コラーゲン線維が,平行かつ伸張しないコラーゲン線維へ形質転換したものである。よって,筋の過用による収縮は,腱を通して関節包の機械的受容器のタイプIII受容器(ゴルジ腱器官様)と侵害受容器のタイプIV受容器(自由神経終末,神経叢)を刺激することになり,関節周囲に痛みを訴えることが多い。しかし,その原因は関節ではなく,筋膜にあることが多いのである。
この筋膜機能異常に対する徒手理学療法アプローチとして,今回は筋膜マニピュレーション(Fascial Manipulation)の理論と治療方法について,本法のアジアで唯一の国際インストラクターとして概説する。
筋膜マニピュレーションは,筋膜機能異常を生じている協調中心(筋力のベクトルが収束する筋外膜上の部位)あるいは融合中心(協調中心が運動方向に応じて融合した深筋膜上の部位)に対して充分な時間の摩擦を与え,基質の粘稠性を修正,ヒアルロン酸の凝集化を改善する。この治療によって,筋膜を正常な配列に再構築することで,筋・筋膜痛解消,筋出力・柔軟性・運動パフォーマンス・ADLの改善に効果が見られる。
今回のセッションにおいて,筋膜治療がこれまでの医学や理学療法の考えを進化させることを感じていただき,今後,この講習会に多くの方が参加することを期待いたします。