第52回日本理学療法学術大会

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日本糖尿病理学療法学会企画 » 教育講演1

[DM-1] 教育講演1 糖尿病・運動療法のトピックスと将来展望

2017年5月13日(土) 14:10 〜 15:10 B2会場 (東京ベイ幕張ホール No. 3・4)

司会:野村 卓生(関西福祉科学大学保健医療学部リハビリテーション学科理学療法学専攻)

日本糖尿病理学療法学会企画

[DM-1] 糖尿病・運動療法のトピックスと将来展望

田村 好史 (順天堂大学大学院代謝内分泌内科学・スポートロジーセンター/順天堂大学国際教養学部グローバルヘルスサービス領域)

糖尿病治療において,血糖コントロールを薬物治療などで良くすれば三大合併症を予防することは出来るかもしれないが,運動をしていなければ,予後やQOLは良好な状態にならない可能性が疫学的な調査から示されてきた。現在の運動のガイドラインは,運動は太ったから,病気になったから行うのではなく,禁忌でなければすべての人が普段から行うべきこととされている。実際に,有疾患者に対する運動ガイドラインと一般のガイドラインは概ね同様の目標値が掲げられている場合が多い。
我々は,運動により様々な健康効果が得られるメカニズムとして,骨格筋細胞内の脂質「脂肪筋」が重要な役割を担っていると考えている。運動不足や高脂肪食があると,脂肪筋が蓄積しインスリン抵抗性を惹起し,これとは逆に2週間程度の有酸素運動により脂肪筋とインスリン抵抗性は改善する。つまり,見た目の「肥満」とは全く別次元のスピードで,有酸素運動が脂肪筋や代謝状態を改善し,様々な健康効果をもたらしているように考えられる。その一方で,超高齢化社会を迎える我が国において,骨格筋量を増やすレジスタンス運動の重要性は極めて高い。しかしながら,現在の日本における運動療法に関する実態調査が行われたが,我が国の糖尿病患者の運動実施率は約50%で,レジスタンス運動の実施率はおおよそ7%程度であると推測されている。今後,この問題をどのように打開していくのかが,糖尿病に限らず国民に課せられた課題と考えられる。
エビデンスはまだ少ないが,臨床上の幾つかの工夫により患者のアドヒアランスが高められる方法論が明らかになりつつある。特に,調査から明らかとなった「患者がなぜ運動しないのか?」に関する解析結果は,日常診療に反映するべき多くの示唆に富んでおり,当日はこれらの内容から考えられる医療者が心がけることについて言及したい。