第52回日本理学療法学術大会

講演情報

日本糖尿病理学療法学会企画 » シンポジウム

[DM-2] シンポジウム 糖尿病に対する理学療法の発展を目指して~臨床介入研究最前線~やればできる!! 糖尿病の理学療法介入研究

2017年5月13日(土) 15:30 〜 17:00 B2会場 (東京ベイ幕張ホール No. 3・4)

座長:横地 正裕(あさひ病院リハビリテーション科), 座長:大平 雅美(信州大学医学部保健学科理学療法学専攻)

日本糖尿病理学療法学会企画

[DM-2-2] 糖尿病網膜症に対する運動療法確立に向けて―運動強度や運動種目の違いによる眼圧および眼底血流に着目して―

河江 敏広 (広島大学病院診療支援部リハビリテーション部門)

糖尿病患者に対する運動療法は,インスリン抵抗性改善を介して糖代謝を良好にすることは明らかであり,既に確立された治療法である。さらに近年では,糖尿病合併症に対する運動効果も明らかにされており,神経症を有する糖尿病患者においては運動療法によって筋力増強やバランス機能向上が認められており,腎症を有する糖尿病患者においては運動療法によって運動耐容能改善などを認めている。一方で網膜症に対する運動療法はその適否も明らかでなく,効果もいまだ明確でない。
わが国における網膜症に対する運動療法の指針については改変Davis分類(単純網膜症,増殖前網膜症,増殖網膜症)を用いてステージごとに運動についての留意事項が記載されているものが一般的に用いられている。しかしながら我々理学療法士にとっては運動強度や運動種目についての詳細な記載が無いことから実際の運動指導場面においてはこの分類に即して具体的にどのように指導すべきか困惑する事が多い。もう一つ網膜症に対する運動療法を困難にする理由としては網膜症の病態に影響を及ぼす可能性がある運動中や運動後の眼圧や眼底血流の状態が不明瞭であることが挙げられる。

網膜症はわが国においては糖尿病患者における10.6%が網膜症と診断されており,さらに年間3000人もの糖尿病患者が網膜症悪化により失明に至っている。そのため,網膜症患者の血糖コントロールを改善し,重症化を予防するためには網膜症の病態を悪化させずに血糖コントロール改善や健康増進を促進するための安全な運動プログラムの作成が必要であり,そのためには運動による眼圧および眼底血流の関連を検証する必要がある。そこで今回我々はまず運動による眼圧および眼血流の基礎的データ確立のために,運動強度や運動種目の違いによる眼圧および眼底血流の変化について評価したので報告する。