第52回日本理学療法学術大会

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日本理学療法教育学会企画 » シンポジウム

[ED-1] シンポジウム 理学療法士教育における剖出を伴う人体解剖学実習を考える

2017年5月12日(金) 16:00 〜 17:30 B2会場 (東京ベイ幕張ホール No. 3・4)

座長:河上 敬介(大分大学福祉健康科学部福祉健康科学科理学療法コース/人体解剖学実習検討ワーキンググループ)

日本理学療法教育学会企画

[ED-1-1] コメディカル教育委員会委員長の立場から

澤口 朗, 豊嶋 典世, 高橋 伸育 (宮崎大学医学部解剖学講座超微形態科学分野)

医療の現場で活躍するメディカルスタッフの養成過程において,人体の構造を知る解剖学は専門科目の礎を築く重要な位置づけにあることに疑念を抱く余地はない。とくに理学療法士には骨・関節や筋,神経の走行をはじめとする運動器を中心に三次元的な構造理解が必要不可欠であり,長年にわたり「剖出を伴う人体解剖学実習の必要性」が唱えられてきた。
宮崎大学医学部解剖学講座では,宮崎県が推進するスポーツランド宮崎構想「スポーツメディカルサポートシステム構築」への参画を機に,臨床経験を積んだ理学療法士を対象に人体構造の理解を深める解剖学標本示説研修を展開し,平成25年度にはプロ野球トレーナー(主に理学療法士または鍼灸師の有資格者)を対象とした解剖学標本示説を新たに開始した。この解剖学標本示説は既に剖出がなされた解剖体を見学する形式ではあるが,医学書や図譜では捉えきれず模型でも再現しきれない複雑な神経叢の立体構築,関節を補強する靱帯やその運動に関わる筋の停止部位など,人体の精緻な構造を学び取ることができる。結果として,これまで想像の域を超えられなかった皮下の構造に明確なイメージをもった理学療法士の技術力が向上することで,一人でも多くの患者に1日でも早い回復が促されるものと大いに期待される。
今後は既に剖出がなされた解剖体の「見学」形式ではなく,「剖出」を伴う実習が理想の形式であるが,死体解剖保存法をはじめとする法律上の制約に加え,全国的に医学部の教職員定数の削減が進む昨今では献体の確保,防腐処理・保管から,実習後の火葬,遺骨返還に携わる職員の負担が増大し,さらには実習指導にあたる教員の確保も危機的状況にある。本講演を通じて,「剖出」を伴う実習の実現に向けた現状と課題を共有しながら,有効な解決策を見出していきたい。