The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT)企画 » 特別講演

[KS-2] 特別講演 筋ジストロフィーに対する治療研究を中心とした筋研究の最前線

Sat. May 13, 2017 5:50 PM - 7:20 PM A1会場 (幕張メッセ国際会議場 コンベンションホール)

司会:河上 敬介(大分大学福祉健康科学部福祉健康科学科理学療法コース)

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT)企画

[KS-2] 筋ジストロフィーに対する治療研究を中心とした筋研究の最前線

武田 伸一 (国立精神・神経医療研究センター神経研究所)

寝たきり,ギプス固定などに伴う筋の不動,加齢およびロコモティブ症候群,糖尿病等の生活習慣病に伴う骨格筋の萎縮は,高齢化社会を迎えた日本では深刻な問題となっている。筋萎縮の課題に取り組むためには,これまでに行なわれてきた医学的研究を出発点とする必要がある。最も良い例は,希少性疾患の代表であるデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)である。DMDはX-染色体連鎖性遺伝形式をとり,ジストロフィンの欠損を原因とする遺伝性筋疾患であるが,副腎皮質ステロイド剤の進行抑制効果が認められているものの,未だ筋変性・壊死を阻止する決定的な治療法はない。現在,最も注目されている治療法としてアンチセンス・オリゴヌクレオチド(AON)を用いたエクソン・スキップ誘導療法がある。
我々は,ジストロフィン遺伝子のイントロン6のスプライシング変異によりエクソン7が欠失し,ジストロフィンの発現を欠く筋ジストロフィー犬に対し,モルフォリノで合成したAONを投与した。その結果,ジストロフィン遺伝子のエクソン6と8のスキップにより,全身骨格筋でジストロフィンが発現し,骨格筋障害の進行が抑制されることを明らかにした(Yokota T, et al., Ann Neurol, 65:667-676, 2009)。次に,企業と共同開発契約を結んだ上で,ジストロフィン遺伝子のエクソン53スキップを誘導する治療薬を創製し,医師主導治験に向けた準備を進めた。2013年6月に早期探索的臨床試験として開始し,大きな有害事象なく投与を終了することができた。本薬は2015年10月厚生労働省により「先駆け審査指定制度の対象品目」の一つとして選ばれたばかりでなく2016年10月には米国FDAからもFast trackの認定を受け,同年初頭から,日本と米国において次相試験が開始されている。
本講演ではこれまでに我々が取り組んできたDMDに対する研究を出発点とし,どのように筋萎縮の課題に挑んだら良いのかお話ししたい。