[KS-3-1] 随意筋収縮強度変化が体性感覚誘発磁界に及ぼす影響
ヒトが随意運動を行うと,それに伴い体性感覚系において様々な変化が生じる。中でも随意運動側と同側の末梢神経を刺激して体性感覚誘発電位(Somatosensory evoked potentials;SEPs)を記録すると,安静時よりもSEP振幅値が減少するGatingが生じることが多くの先行研究で報告されている(Kirimoto, et al., 2014;Nakata, et al., 2003)。また,哺乳類を対象とした研究においては四肢の随意運動中に一次体性感覚野(Primary somatosensory cortex;S1)領域に存在する錐体細胞の興奮性が低下することが報告され,随意運動中にS1へ求心性入力が到達する前に末梢感覚情報の調節が行われることが示唆されている(Courtemanche, et al., 1997;Fanselow and Nicolelis 1999)。随意運動中だけでなく,受動的な触覚刺激や他動運動といった求心性入力によっても体性感覚系に変化が生じることが報告され,Gatingは大脳皮質内および求心性経路上での作用によって生じることが示唆されている。随意筋収縮強度の増加に伴い,一次運動野を始めとした運動関連領域の興奮性上昇(Onishi, et al., 2006)と同時に,筋紡錘や腱紡錘といった末梢感覚入力が増加する(Harrison and Jankowska 1984)ため,筋収縮強度の変化によってGating量が変化する可能性が示唆される。そこで我々は,随意運動時におけるGatingについての詳細を明らかにする目的で,脳磁図(Magnetoencephalography;MEG)を用いて,随意運動時における筋収縮強度がGatingに及ぼす影響を調査したので報告する。