The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本運動器理学療法学会企画 » 特別講演

[MT-3] 特別講演 関節機能異常に対するエビデンスの現状

Sun. May 14, 2017 9:20 AM - 10:20 AM A1会場 (幕張メッセ国際会議場 コンベンションホール)

司会:横山 茂樹(京都橘大学健康科学部)

日本運動器理学療法学会企画

[MT-3] 関節機能異常に対するエビデンスの現状

木藤 伸宏 (広島国際大学総合リハビリテーション学部)

本講演ではまず【関節機能異常】と【エビデンス】の意味を深く掘り下げていく。まずは【関節機能異常】とは何かについて考察する。ここでは関節機能異常と関節機能障害を同義語として取り扱う。Kaltenbornは,Manual Mobilization of the Joint vol.I:The Extremitiesの第1版(1960年)から第4版(1985)迄は,体性機能機能障害(Somatic dysfunction)のひとつとして位置づけている。関節とは,神経系,筋系,骨格系,結合組織系からなる関節運動を起こす一つの系である。よって,関節を構成する各系の器官,組織,そして機能の障害,またはその各系の相互作用の障害によって関節機能障害が起こる。具体的には,予測される正常な可動域より増加,減少,あるいは正常な運動から逸脱している状態と定義されている。

次に【エビデンス】について考察する。英語の【evidence】は日本人には理解が難しい単語である。【evidence】は不可算名詞であり,一定の学問分野のなかで認識が獲得され,その認識が利用される仕方に関心を向けた哲学の主要な一部門であるエピステモロジーから派生している。つまり,エビデンスとは,個別の事実と結果ではなく,臨床において活用できる論理であり,さまざまなピースを論理的に整合性が取れるように組み立て,構成した論理の不可分な全体を指すのである1)

臨床において多くの理学療法士は関節機能障害に対し治療介入を行っている。しかし,どのような関節機能障害が生じ,その原因を推定し,考えられる原因に対し適切に治療法を選択し実施するための論理が構築されているかというと,オーストラリア,カナダ,アメリカなどの諸外国に比べ日本ではかなり遅れている。本講演では,関節機能障害に対する理学療法のエビデンスを構築するために,われわれが何をしないといけないのについて述べていく。

1)今井むつみ:学びとは何か <探求人>になるために,岩波新書