第52回日本理学療法学術大会

講演情報

日本運動器理学療法学会企画 » 教育講演2

[MT-4] 教育講演2 統計学を用いたエビデンス構築論

2017年5月14日(日) 10:40 〜 11:40 A1会場 (幕張メッセ国際会議場 コンベンションホール)

司会:山崎 肇(羊ヶ丘病院リハビリテーション科)

日本運動器理学療法学会企画

[MT-4] 統計解析と研究デザイン・研究への応用について

対馬 栄輝 (弘前大学大学院保健学研究科)

統計量(統計)とは集団を記述する数量のことであり,生のデータはもとより平均や標準偏差,中央値などの特性値が挙げられる。統計量を扱って理論的な統計的法則を導き出し(数理統計学),その法則から統計的推論(推測統計学)を行うことを総合して“統計学”という。このさき理学療法で扱われるデータの特殊性が見いだされるとすれば,表題中の『統計学』という表記は,あながち間違いではないと考える。しかし,ここでは統計学のうち,統計解析または統計的方法に主眼を置く。

疫学は集団の特性を対象とする学問である。ゆえに疫学研究では統計解析の活用は必須となる。根拠に基づく理学療法(EBPT)を実践するための2本柱は,疫学的な臨床研究方法と統計解析の知識である。

研究に携わる者以外にとって研究方法や統計解析の知識は不要であると主張したいが,そうもいっていられない現状にある。EBPTの根源となるエビデンスは,臨床研究から生まれるためである。それでは臨床の場に携わった臨床研究者がいればよいとの考えもあろうが,それも問題である。臨床で理学療法を実践している理学療法士がEBPT実践のため,さらにはエビデンス構築のために重要な役割を持つことに自覚しなければならない。

本タイトルは運動器理学療法とは程遠い印象を持つ。しかし,整形外科的治療,特に手術療法後の関節機能回復に主眼を置いた理学療法から,日常生活や生活環境も考慮した2次障害予防や患者教育までも含めた理学療法効果の可能性を考慮して,今後は具体的なエビデンス構築とその活用を重視していかなければならない。そのためには改めて疫学的臨床研究方法と統計解析の知識が必要となる。そこで導入段階ではあるが,これらの知識とエビデンス構築の関係性について解説するので,ともに考えていければ幸いである。