[NV-2-2] 大脳皮質-皮質下神経核の投射線維を中心とした脳のシステムからみた臨床的俯瞰
ヒトが行為を行うためには,意志や企図などの認知的なプロセスがあり,個体と環境の状況に則した行動の手段を選択する。実際に随意的な運動が起こる際には,先行的かつ随伴的に姿勢が調節され,結果は常にモニタリングされて次のデマンドに最適化するよう調整される。また,それらの行動は一定の成果(報酬)によって強化学習が生じ,経験の蓄積によって行動の制御則が形作られる。このような一連のプロセスにおいて,脳には様々な認知,情動,運動,知覚などの情報を並列的に処理するためのシステムが存在していることが知られている。
脳血管疾患,特に脳出血の好発部位である大脳基底核,とりわけ線条体には様々な皮質領域からの投射線維が終止する。線条体ニューロンのおよそ90%は投射ニューロンで構成されているが,比較的広範囲な樹状突起が広がっており密接に関係する領域の一部が収束する(宮地,2006)。このため線条体は,単に体部位対応の閉鎖回路の中継点ではなく複数の入力が統合されるハブ(接合拠点)としての機能を有している可能性があり,脳損傷などでこれらの機能に障害を受けるとシステムが破綻して関連領域にも影響を及ぼす。結果として損傷部位の脳局在機能のみならず様々な問題が発生すると考えられている。
脳損傷患者に対して理学療法を実施するにあたり,これらの脳機能を理解することが必要であることは言うまでもない。しかし,実際の臨床現場において,我々が目的としている『基本動作能力の回復』に向けて脳に関する知識をどのように活用するべきであろうか?今回は,線条体を中心とした皮質下の投射線維からなる脳のシステムに焦点を当て,我々理学療法士が臨床でどのように脳神経科学を活かして治療戦略を立てていくべきか臨床家の立場から俯瞰してみたい。
脳血管疾患,特に脳出血の好発部位である大脳基底核,とりわけ線条体には様々な皮質領域からの投射線維が終止する。線条体ニューロンのおよそ90%は投射ニューロンで構成されているが,比較的広範囲な樹状突起が広がっており密接に関係する領域の一部が収束する(宮地,2006)。このため線条体は,単に体部位対応の閉鎖回路の中継点ではなく複数の入力が統合されるハブ(接合拠点)としての機能を有している可能性があり,脳損傷などでこれらの機能に障害を受けるとシステムが破綻して関連領域にも影響を及ぼす。結果として損傷部位の脳局在機能のみならず様々な問題が発生すると考えられている。
脳損傷患者に対して理学療法を実施するにあたり,これらの脳機能を理解することが必要であることは言うまでもない。しかし,実際の臨床現場において,我々が目的としている『基本動作能力の回復』に向けて脳に関する知識をどのように活用するべきであろうか?今回は,線条体を中心とした皮質下の投射線維からなる脳のシステムに焦点を当て,我々理学療法士が臨床でどのように脳神経科学を活かして治療戦略を立てていくべきか臨床家の立場から俯瞰してみたい。