The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本神経理学療法学会企画 » シンポジウム

[NV-2] シンポジウム 脳のシステム障害と理学療法

Sat. May 13, 2017 12:50 PM - 2:50 PM A2会場 (幕張メッセ国際会議場 国際会議室)

座長:吉尾 雅春(千里リハビリテーション病院セラピー部)

日本神経理学療法学会企画

[NV-2-3] 小脳系のシステム障害と理学療法―神経科学の知見を理学療法に応用する―

手塚 純一 (さいわい鶴見病院リハビリテーション科)

小脳疾患の患者を担当することになった際,何を評価しどんな理学療法を行うだろうか。小脳は従来から知られている平衡機能と協調運動の他に,近年では運動学習や認知機能にも関与することが知られてきている。
小脳は横方向の襞構造によって第I~Xの10小葉に区分され,縦帯状構造としては虫部・半球中間部・半球外側部および片葉小節葉に分類され,深部には室頂核・中位核・歯状核が存在する。これらは小脳脚によって脳幹と神経連結し,下小脳脚は脊髄小脳路・オリーブ小脳路からの入力,中小脳脚は橋核からの入力を受け,上小脳脚は小脳核からの出力経路となっている。
片葉小節葉は前庭小脳として眼球運動や姿勢に関する前庭反射制御に関与する。虫部第I~V小葉および第VIII小葉は脊髄小脳として歩行・抗重力姿勢制御に,虫部第VII小葉は随意性眼球運動制御に,虫部第IX小葉は体平衡と姿勢制御および頭位制御に関与する。虫部第III~VI小葉の半球部寄りの部分と半球部第III~VIII小葉は同側の随意運動制御に関与し,虫部第III~VI小葉が下肢,虫部第IV~半球部第VI小葉が上肢,半球部第VI小葉が頭部という体部位局在が認められている。またこれらの運動制御に関与する部位は,長期抑圧という学習メカニズムにより内部モデルを形成し運動学習にも関与している。半球部の最外側に位置する第一脚・第二脚はヒトで小脳全体の3~4割の体積を占めるほど発達しており,前頭連合野と神経連絡し言語課題・注意・遂行機能・視空間認知・作業記憶・学習・情動など幅広い認知機能に関与している。
以上のことから小脳を運動の調節をする器官と一様に扱うのではなく,部位ごとに分け機能局在を踏まえ対応していくことが重要になる。本シンポジウムでは上述の小脳システムについて概説し,臨床に従事する立場から小脳系のシステム障害に対し神経科学の知見をどう活かして理学療法を行っていくか,症例を提示しながらお話ししたい。