第52回日本理学療法学術大会

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[NV-3] 教育講演 脳卒中後片麻痺患者の歩行トレーニング戦略と戦術

2017年5月14日(日) 12:30 〜 14:00 A1会場 (幕張メッセ国際会議場 コンベンションホール)

司会:松田 淳子(大阪行岡医療大学医療学部理学療法学科)

日本神経理学療法学会企画

[NV-3] 脳卒中後片麻痺患者の歩行トレーニング戦略と戦術

大畑 光司 (京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻)

近年,脳卒中後片麻痺患者をはじめとした中枢神経疾患患者に対して,運動機能の改善を目標とした種々の先端的技術を応用したアプローチが報告されてきている。例えば,脳機能改善のためのニューロリハビリテーションの技術や,仮想現実(Virtual Reality),ロボットなどを利用したトレーニング手法などは今後のリハビリテーションの主流をなすかもしれない。
急激な発展が見込まれる技術革新の一方で,振り返ってみると我々理学療法士自体は大きく変化したのであろうか。確かに神経生理学者の努力により脳機能の理解が進み,リハ医の指導によりエビデンスが確立し,開発者の努力により新しい装具や機器が生まれ,この領域に関連する幾つかの進歩は着実に認められている。しかし,本来,理学療法士がその専門性を発揮しなければならない部分について,果たして我々は前進していると胸を張って言えるだろうか。
理学療法士の専門技術とは単にストレッチ技術とか,各種のトレーニング知識を有することではない。適切な介入を行うためには,対象患者に対する動機付けなどの心理的サポート,対象患者の個別性に合わせた問題解決手段の立案,適切な運動を引き出すための言語的もしくは非言語的指導能力が求められるはずである。しかし,介入において大きな効果の違いを生むはずのこれらの技術を,我々はまだ,ほとんど体系化できていない。もし,自立支援方策を対象者に最適化する技術を理学療法士が持っていないとするならば,この領域の技術や機器が進歩の中で理学療法士の必要性は失われることになるかもしれない。
本教育講演では脳卒中後片麻痺患者の歩行トレーニングを中心にその戦略と戦術をまとめ,聴衆の批判を仰ぎたい。その中で,分科学会に移行する神経理学療法学会と会員である理学療法士が何に対して責任を持つべきかを議論する端緒としたい。