[O-DM-01-4] 糖尿病性末梢神経障害患者の歩行動揺性に関わる因子の検討
―筋同時収縮は筋力よりも歩行に影響を与えているのか?―
Keywords:Diabetic peripheral neuropathy, Co-contoraction, Root mean square
【はじめに,目的】
糖尿病性末梢神経障害(以下DPN)は糖尿病(以下DM)患者が患う合併中でも高頻度に生じる合併症である。DPN合併患者の歩行動揺性はDMのみの患者と比較して大きく,転倒や身体活動量低下の要因となるため,理学療法士の介入意義は大きい。DPN合併患者の歩行の動揺性が増加する原因として深部感覚の低下や下腿筋力の低下などが報告されている。またDPN合併患者は歩行中の下腿筋同時収縮の増加が報告されており,歩行に影響を与えている可能性がある。しかし,下腿筋同時収縮が他の因子よりも歩行に与える影響度が大きいかどうかは不明である。理学療法の高い治療効果を出す為には,より大きな影響を与えている因子を明らかにすることが重要である。そこで本研究の目的はDPN合併患者の歩行動揺性に影響を与える因子について明らかにすることとし,下腿筋同時収縮を含めて検討を行った。
【方法】
対象は教育入院したDPN合併患者40名とし,整形外科疾患や中枢性疾患の既往のある者は除外した。なおDPNの診断は専門医師によって行われた。深部感覚の指標は振動覚とし,C128音叉を内果にあて,振動が分からなくなるまでの時間を計測した。筋力の評価はBIODEXを用い,足関節0°より最大随意収縮にて背屈,底屈を5秒間各3回実施し,最大トルク平均/体重を算出した。下腿筋同時収縮と歩行の動揺性の評価は自己快適速度での10m歩行テスト時に測定した。下腿筋同時収縮の評価には表面筋電計を用い,対象筋は前脛骨筋とヒラメ筋としCo-contraction Index(以下CI)を算出した。また歩行の動揺性の評価は3軸加速度計を用い,Root Mean Square(以下RMS)を算出した後,速度の2乗値で補正した。統計学的解析は各指標の関係性を明らかにするためにPearsonの相関分析を実施した。また,有意な関係が認められた指標を独立変数とし,従属変数をRMS,共変量に年齢,性別,BMIとした重回帰分析(stepwise)を実施した。統計処理はIBM SPSS version 23を用いて行い,有意水準は危険率5%未満とした。
【結果】
相関分析の結果,RMSとの有意な関係が認められた指標はCIのみであった(r=0.47,p<0.05)。有意な関係を認めたCIを独立変数とした重回帰分析では,年齢,性別,BMIで調節したが,CIとRMSの関係は有意であった(β=0.42,p<0.05,R2=0.19)。
【結論】
本研究の結果より下腿同時収縮は深部感覚や下腿筋力よりも歩行の動揺性に影響を与えていることが示唆された。動揺性が少ない歩行を実施する為には,滑らかな関節運動が必要であり,関節運動を構成する主動作筋と拮抗筋のリズミカルな交互収縮が重要である。DPN合併患者は末梢神経機能の低下によって下腿筋同時収縮が増加しており,筋力よりも歩行の動揺性に影響を与えたと考えられる。DPN合併患者に対する歩行治療には筋力だけでなく,筋の収縮するタイミングについても介入する必要あると考えられる。
糖尿病性末梢神経障害(以下DPN)は糖尿病(以下DM)患者が患う合併中でも高頻度に生じる合併症である。DPN合併患者の歩行動揺性はDMのみの患者と比較して大きく,転倒や身体活動量低下の要因となるため,理学療法士の介入意義は大きい。DPN合併患者の歩行の動揺性が増加する原因として深部感覚の低下や下腿筋力の低下などが報告されている。またDPN合併患者は歩行中の下腿筋同時収縮の増加が報告されており,歩行に影響を与えている可能性がある。しかし,下腿筋同時収縮が他の因子よりも歩行に与える影響度が大きいかどうかは不明である。理学療法の高い治療効果を出す為には,より大きな影響を与えている因子を明らかにすることが重要である。そこで本研究の目的はDPN合併患者の歩行動揺性に影響を与える因子について明らかにすることとし,下腿筋同時収縮を含めて検討を行った。
【方法】
対象は教育入院したDPN合併患者40名とし,整形外科疾患や中枢性疾患の既往のある者は除外した。なおDPNの診断は専門医師によって行われた。深部感覚の指標は振動覚とし,C128音叉を内果にあて,振動が分からなくなるまでの時間を計測した。筋力の評価はBIODEXを用い,足関節0°より最大随意収縮にて背屈,底屈を5秒間各3回実施し,最大トルク平均/体重を算出した。下腿筋同時収縮と歩行の動揺性の評価は自己快適速度での10m歩行テスト時に測定した。下腿筋同時収縮の評価には表面筋電計を用い,対象筋は前脛骨筋とヒラメ筋としCo-contraction Index(以下CI)を算出した。また歩行の動揺性の評価は3軸加速度計を用い,Root Mean Square(以下RMS)を算出した後,速度の2乗値で補正した。統計学的解析は各指標の関係性を明らかにするためにPearsonの相関分析を実施した。また,有意な関係が認められた指標を独立変数とし,従属変数をRMS,共変量に年齢,性別,BMIとした重回帰分析(stepwise)を実施した。統計処理はIBM SPSS version 23を用いて行い,有意水準は危険率5%未満とした。
【結果】
相関分析の結果,RMSとの有意な関係が認められた指標はCIのみであった(r=0.47,p<0.05)。有意な関係を認めたCIを独立変数とした重回帰分析では,年齢,性別,BMIで調節したが,CIとRMSの関係は有意であった(β=0.42,p<0.05,R2=0.19)。
【結論】
本研究の結果より下腿同時収縮は深部感覚や下腿筋力よりも歩行の動揺性に影響を与えていることが示唆された。動揺性が少ない歩行を実施する為には,滑らかな関節運動が必要であり,関節運動を構成する主動作筋と拮抗筋のリズミカルな交互収縮が重要である。DPN合併患者は末梢神経機能の低下によって下腿筋同時収縮が増加しており,筋力よりも歩行の動揺性に影響を与えたと考えられる。DPN合併患者に対する歩行治療には筋力だけでなく,筋の収縮するタイミングについても介入する必要あると考えられる。