The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本糖尿病理学療法学会 » 口述発表

[O-DM-02] 口述演題(糖尿病)02

Fri. May 12, 2017 3:30 PM - 4:30 PM A6会場 (幕張メッセ国際会議場 中会議室303)

座長:田仲 勝一(香川大学医学部附属病院リハビリテーション部)

日本糖尿病理学療法学会

[O-DM-02-6] 健常者における表皮内神経線維疼痛閾値の検討
年齢的変化に着目して

加藤 秀典, 鈴木 康裕, 青木 麻美, 石川 公久, 羽田 康司 (筑波大学附属病院)

Keywords:健常者, 表皮内神経線維疼痛閾値, 糖尿病性多発神経障害

【はじめに,目的】糖尿病性多発神経障害(以下:DPN)の早期発見における評価法として,皮膚基底膜を貫通しない微小針電極を用いた表皮内神経線維末端痛覚閾値(以下:PINT)検査がある。PINT検査は,痛覚を伝えるAδ線維やC線維の末梢小径神経線維を選択的に刺激することが可能であり,糖尿病患者におけるDPN早期の表皮内神経線維喪失を捉える鋭敏な指標として着目されている。このようにPINT検査は臨床上,適応可能であることが示されている。しかしながら,DPNの早期発見を示す上で,健常者データは必要であるが,健常者を対象とした基礎資料は十分でない。体性感覚は年齢に伴い低下するが,健常者におけるPINT値の年代別分布は示されていない。そこで本研究において,PINT検査を行うことで健常者における年齢と痛覚閾値の分布を調査し,また二点識別覚,振動覚およびSemmens-Weinsteinモノフィラメントを使用した足底感覚(以下:足底感覚)における年齢との関連性についても検討した。


【方法】対象は,健常な病院職員,大学生,地域在住者の100名(男性35名,女性65名)であり,平均年齢は49.7±18.7歳(19~84歳)であった。対象者の選定条件として,下肢末梢感覚神経障害を呈していない,糖尿病に罹患していない,歩行および日常生活動作が自立している,を条件とし,対象の選考は各年代で層別化した。PINT検査の測定部位は短趾伸筋部とし表面刺激電極を装着した後,測定者は0.20mAより電気刺激を開始し,刺激電流を0.02mAずつ下げながら痛み感の有無を逐次報告させ,応答がなくなる前の刺激電流値をPINT値とした。また振動覚は下腿内果部,二点識別覚および足底感覚は踵部で測定し,各項目の平均値および標準偏差値を求めた。年齢との関連性については二次回帰分析を用いて検討し,統計分析はR(ver.3.1)を用いて実行し,有意水準は全て5%未満とした。


【結果】全対象における各項目の平均値および標準偏差値は,PINT値0.08±0.05mA,振動覚14.7±3.7秒,二点識別覚18.63±10.90mm,足底感覚12.16±2.26であった。各項目と年齢の関連性において,二次関数の決定係数はPINT値0.017,振動覚0.294,二点識別覚0.173,足底感覚0.301であった。二点識別覚,足底感覚においては,60歳頃から著しく低下し,PINT値は年齢的な差は認めなかった。


【結論】健常者において,振動覚,二点識別覚,足底感覚は年齢とともに低下を示したが,PINT値は年齢との関連性を一切認めず,年齢的な影響を受けない可能性が示唆された。本研究より,健常者におけるPINT値の指標を示せたことから,この指標はDPNの早期発見を示す上での基礎的資料の一部となる可能性が示唆された。