[O-ED-01-5] 再学習が技術に対する自己評価を変化させる
―蘇生教育 第三報―
Keywords:蘇生教育, 再学習, 自己評価
【目的】
本学では,1年次と3年次に一次救命処置(Basic Life Support;以下BLS)の知識と技術の獲得を目標とした蘇生教育を,授業として実施している。本大会の第50回で,授業履修後に心肺蘇生に対する行動の心理的側面が有意に向上したことを報告し,第51回では,この心理的側面の経時的変化を報告した。獲得したBLS技術(以下;技術)について,先行研究では学習後,経時的に低下するとされる。1年次に獲得した技術は,2年経過した3年次では低下しているであろう。しかし,第二報で技術が低下していることに対象自身が気付いていないことを示し,自身が技術をできると捉えていることが継続学習の阻害因子となり得ることを提起した。この知識と技術が低下している対象において,低下した技術を適切に自己評価できるだろうか。本研究は,第二報に続く追加検証として,低下した技術を適切に自己評価できるか,また再学習が自己評価を変化させ得るかについて検証することを目的とする。
【方法】
本学学生(現3年生)81名を対象とした。3年次BLS授業前に1年次で学習したBLS(1年次ではガイドライン2010を学習)を実施させ,技術の自己評価(以下;前自己評価)をさせた。技術自己評価項目は1反応の有無・呼吸の確認,2救急対応システムへの出動要請,3脈拍の確認,胸骨圧迫における4手の位置,5テンポ(速さ),6深さ,7胸壁が完全に元に戻るまで待つ,8中断を最小限に抑える,の8項目とした。各項目を1できた,0できなかったとし,2段階で自己評価をさせた。さらに追加調査として,対象のうち同意を得られた72名に対し,3年次BLS授業後に,授業前に実施した技術を振り返り,再度自己評価(以下;後自己評価)をさせた。8項目の点数を合計し,再学習前後の自己評価を比較した。統計処理は,Wilcoxonの符号付順位検定を用いて分析検討し,有意水準は5%とした。統計解析には,SPSS Statistics 23を使用した。
【結果】
結果を中央値(四分位範囲)で示した。前自己評価は6(5.5-7)であった。後自己評価は5(4-7)であった。再学習後に,授業前に実施した技術を振り返った後自己評価が,前自己評価より有意に低かった(p=0.01)。
【結論】
本研究により,再学習が技術に対する自己評価を変化させることが明らかとなった。第二報では,技術の継続学習のためには,定期的な技術評価の場が気付きを与えることを報告したが,本研究結果より知識と技術が低下していると,自らの技術低下に気付くことができないことが示された。しかし,再学習により知識と技術を再獲得することで,技術低下を適切に捉え,振り返ることができた。そのため,後自己評価が低下したと考える。本研究結果は,理学療法教育における様々な評価,治療技術の学習後に,その技術を維持,継続学習するための効果的な動機付けの方法を示唆する可能性がある。
本学では,1年次と3年次に一次救命処置(Basic Life Support;以下BLS)の知識と技術の獲得を目標とした蘇生教育を,授業として実施している。本大会の第50回で,授業履修後に心肺蘇生に対する行動の心理的側面が有意に向上したことを報告し,第51回では,この心理的側面の経時的変化を報告した。獲得したBLS技術(以下;技術)について,先行研究では学習後,経時的に低下するとされる。1年次に獲得した技術は,2年経過した3年次では低下しているであろう。しかし,第二報で技術が低下していることに対象自身が気付いていないことを示し,自身が技術をできると捉えていることが継続学習の阻害因子となり得ることを提起した。この知識と技術が低下している対象において,低下した技術を適切に自己評価できるだろうか。本研究は,第二報に続く追加検証として,低下した技術を適切に自己評価できるか,また再学習が自己評価を変化させ得るかについて検証することを目的とする。
【方法】
本学学生(現3年生)81名を対象とした。3年次BLS授業前に1年次で学習したBLS(1年次ではガイドライン2010を学習)を実施させ,技術の自己評価(以下;前自己評価)をさせた。技術自己評価項目は1反応の有無・呼吸の確認,2救急対応システムへの出動要請,3脈拍の確認,胸骨圧迫における4手の位置,5テンポ(速さ),6深さ,7胸壁が完全に元に戻るまで待つ,8中断を最小限に抑える,の8項目とした。各項目を1できた,0できなかったとし,2段階で自己評価をさせた。さらに追加調査として,対象のうち同意を得られた72名に対し,3年次BLS授業後に,授業前に実施した技術を振り返り,再度自己評価(以下;後自己評価)をさせた。8項目の点数を合計し,再学習前後の自己評価を比較した。統計処理は,Wilcoxonの符号付順位検定を用いて分析検討し,有意水準は5%とした。統計解析には,SPSS Statistics 23を使用した。
【結果】
結果を中央値(四分位範囲)で示した。前自己評価は6(5.5-7)であった。後自己評価は5(4-7)であった。再学習後に,授業前に実施した技術を振り返った後自己評価が,前自己評価より有意に低かった(p=0.01)。
【結論】
本研究により,再学習が技術に対する自己評価を変化させることが明らかとなった。第二報では,技術の継続学習のためには,定期的な技術評価の場が気付きを与えることを報告したが,本研究結果より知識と技術が低下していると,自らの技術低下に気付くことができないことが示された。しかし,再学習により知識と技術を再獲得することで,技術低下を適切に捉え,振り返ることができた。そのため,後自己評価が低下したと考える。本研究結果は,理学療法教育における様々な評価,治療技術の学習後に,その技術を維持,継続学習するための効果的な動機付けの方法を示唆する可能性がある。